さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

ログインヘルプ


2016年12月29日

悲しみの聖母 アン・ズルーディ著 小学館文庫

 ヘルメス・ディアクトロス主人公のミステリ第4作。
 カルコス島のイコンが奇跡を起こすといって、観光と信仰の目玉になっている。
 ヘルメスはこのイコンが贋作であることを元彼女のカーラの力を借りて、見破る。
 その調査の中で、島のイコン画家が変死を遂げる。
 犯人は誰か。近親相姦が明らかになり、犯人も明らかになるが、問題の真作イコンはどこにあったか。
 これを発見するプロセスは必ずしも合理的ではなく、超能力的といっても良いものだが、そこで明らかにされる人間の悲しみ、その人間に注がれる優しさはギリシャの神々のそれに近いかもしれない。  


Posted by 北のフクロウ at 15:33Comments(0)読書

2016年12月29日

テッサリアの医師 アン・ズルーディ著 小学館文庫

 謎の調査員ヘルメス・ディアクトロスの第3作ミステリ。
 フランス人医師が何者かに苛性ソーダを顔にかけられ、失明するという事件にヘルメスが遭遇する。
 フランス人医師の過去がどうで、何者がどんな恨みを持って犯行に及んだかを解明する。
 ギリシャが舞台のミステリで、風土、人間性が独特。謎解きも神がかっていて、あまり理論的でないところが魅力の小説である。  


Posted by 北のフクロウ at 15:20Comments(0)読書

2016年12月22日

汚れちまった道 内田康夫著 祥伝社

 内田康彦は浅見光彦を主人公とするミステリーを30年以上書き続けている。
 歴史と地方の風土をバックにあきもせず作品を生み出していることに感服する。
 浅見光彦は33歳から歳をとらないから、テレビなどの浅見役は次から次と変わっていくところが面白い。
 今回は山口県を舞台に、山口出身の詩人中原中也の詩を踏まえて、殺人事件を展開する。
 山口、萩、美祢、防府、宇部などの町がめまぐるしく出て来る。
 浅見光彦が格好良すぎるが、事件の背景は政治家、大企業、暴力団の癒着といういつもながらのテーマであり、読みやすい。
 同時の萩殺人事件という小説もものにしたというから、作者の想像力の豊かさに感心する。
 そうでもなければ同じ主人公で30年以上も小説を書き続けることは出来ないのであろう。  


Posted by 北のフクロウ at 09:18Comments(0)読書

2016年12月22日

ミダスの汚れた手 アン・ズルーディー著 小学館文庫

 アン・ズルーディの太った調査員ヘルメスを主人公とするミステリー第2作。
 ここでもギリシャの街アルカディアで起きた殺人事件を調査員ヘルメスが解決する。
 ヘルメスが昔アルカディアに住んでいたことが明らかになる。そのときの友人が自動車事故で亡くなり、その犯人を見つけ出す。
 ギリシャ社会の独特な習慣や、考え方が色濃く出ていて、ユニークなミステリーとなっている。  


Posted by 北のフクロウ at 09:04Comments(0)読書

2016年12月22日

アテネからの使者 アン・ズルーディ著 小学館文庫

この小説をミステリーというのかどうかが分からないが、ある種の殺人事件をアテネから来た主人公の太った男が解決するという点ではミステリーといっても良いのだろう。
 この主人公はヘルメスという名前を持ち、書体不明である。自称調査員といっているがどの機関かは明らかにされていない。
 ヘルメスはギリシャ神話の神々の使いで、美しいサンダルを履いている。この主人公もサンダルのかわりに白いテニスシューズを履いている。だから主人公は神々の使いかもしれない。
 舞台はギリシャの島である。美しいエーゲ海に浮かぶティミノス島の島民は人間の本性がむき出しである。不倫をおかした人妻が何者かに殺されるが、その犯人を主人公が見つけ出す。しかし解決法が独特であり、作者の人間考察の優れている所が光る。
 その洞察力は神がかりであって、神の使いであることをうかがわせる。
  


Posted by 北のフクロウ at 08:56Comments(0)読書

2016年12月22日

抹殺部隊インクレメント クリス・ライアン著 早川書房

 クリス・ライアンはSAS隊員を主人公に作品を書いている。
 今回も元SASのマット・ブラウニングが主人公で、インクレメントというのは特殊抹殺任務のSASの超極秘部隊との争いを描いている。
 そのような秘密組織が実在するかどうかは知らないが、あっても不思議は無いだろう。この組織と軍事企業が結びついて、ソ連が開発中だった向精神作用薬剤を軍隊に取り入れようと画策するが、副作用があるためその存在を抹殺しようとする。この策謀に主人公が利用されるが、陰謀に気づき、対決することとなる。
 そのような薬剤が存在することは分からないが、軍隊という殺人集団を鼓舞するためにそのような薬剤があっても不思議はないところにこの小説の怖さがある。  


Posted by 北のフクロウ at 08:42Comments(0)読書

2016年12月08日

つばさよつばさ、アイム・ファイン 浅田次郎著 小学館

 浅田次郎がJALの機内誌「SKYWARD」に連載しているエッセイをまとめた。
 図書館にある浅田次郎の小説はほとんど読んで読むものが無いと思っていた所、随筆の欄にこの2冊を見つけた。
 原稿用紙7枚というから、2800字程度を毎月書かねばならない、ということになる。商売とはいえ、難行苦行であろうが、実にネタが豊富で読むものをあきさせない。そこで浮かび上がってくるのが浅田次郎という人間の魅力である。みずからうそつきだが、約束は破らないことをモットーとしているというから、律儀なものである。病気になっても休載したことが無いというのも立派である。
 年間海外60日、国内も60日は旅行しているというから、羨ましい限りであるが、締切期限のある原稿を書かなければならない、とは気の毒ではある。売れっ子作家ならではのうれしい悲鳴であろうか。
   


Posted by 北のフクロウ at 09:26Comments(0)読書

2016年12月08日

はぐれ鷹 熊谷達也著 文芸春秋

 熊谷達也の鷹匠を主人公にする小説。
 熊の代わりに鷹を題材にしたのか。
 自然相手の小説で、手馴れた感じである。
 人間よりも鷹のほうが相性の良い人はいるようで、ラーメンだけを食べ、風呂にも入らず、電話も、新聞も無い生活には耐えられそうも無い。
 それを職業とすることは難しいように思う。  


Posted by 北のフクロウ at 09:10Comments(0)読書

2016年12月03日

ダーウィンの警告 ジェームズ・ロリンズ著 竹書房

 ジェームズ・ロリンズのシグマシリーズの最新作。
 今回のテーマは人類絶滅の危機を回避するために、遺伝子工学を駆使した驚くような解決策を天才的な生物学者が出て来る。
 舞台が南極とブラジルとアメリカ・カリフォルニア州ヨセミテ公園。南極の地底に驚くべき地下生物がいるというのは、「地底世界サブテラニアン」を想起する。ダーウィンが南極近くをビーグル号で航海して、ある発見をし、人類に警告を発していたということが伏線にある。謎の生物圏がXNAなる遺伝子をもつ生物が南極にいたという想定である。
 ジェームズ・ロリンズにいわせると今地球は第6回目の生物絶滅の危機に瀕しており、その原因は人間の文明の行き過ぎであるという。
 人類の知性が生物絶滅の危機を生み出しているから、認知症を生み出す遺伝子を人類に埋め込んで、化石時代の人類まで知性を退化させ、そこから適者生存の競争を行わせようという危機回避の解決策である。人類が地球上の生物絶滅の原因である、という考えはダン・ブラウンの「インフェルノ」と共通である。インフエルノでは人口減少が解決策と考えたが、ロリンズは人間の知性低下が解決策と考える生物学者を登場させた。
 今が第6回目の生物絶滅期になっているというのはショッキングな指摘であり、原因が人類の文明でそれを解決するのも人類の知性であると考えるのは楽観的過ぎるのであろうか。そう信じたいものだ。  


Posted by 北のフクロウ at 10:38Comments(0)読書

2016年12月03日

ソフト・ターゲット S.ハンター著 扶桑社ミステリー

 スティーヴン・ハンターの作品。「極大射程」の主人公ボブ・リー・スワガーの息子レイ・フインデンシオ・クルーズと娘のニッキ・スワガーが主人公となっている。なぜスワガーの息子がクルーズで、スワガーでないかは文中で父母がマニラ郊外で交通事故で亡くなっているが、実の父親はスワガーであるということなので、そこには何か深い事情があるようなので、その点はまた探し出してみようと思う。
 娘はテレビ局の社員となっていて、二人でテロ事件を解決する。
 話は単純で、ハッカー気違いがソマリアのテロリストを集めてモールで大量殺人を計画実行する。それを阻止するという粗筋で、非常に荒っぽいのはスティーヴン・ハンターらしい。レイには間違いなくスワガー家の血が流れている。ニッキにはスガーのガッツがある。  


Posted by 北のフクロウ at 10:02Comments(0)読書

2016年12月01日

イアン・フレミング極秘文書 ミッチ・シルヴァー著 小学館

  かのイアン・フレミングがイギリスの諜報員であったときに知りえた秘密を極秘文書として残していて、それを巡って危機に陥るエール大学女性助教授の話。極秘というのがイギリスの元国王エドワード8世(アメリカ人のシンプソン夫人と結婚するため王位を降りてウインザー公となった)がフランスの防衛機密をナチスにもらしていた、というもの。その秘密文書の内容と、秘密文書を奪おうとする陰謀が織り成して、物語が複線で進行する。史実がどこまで採り入れられているか分からないが、面白い構成のミステリーだ。これが本当ならば例のチャーチルがイアン・フレミングの名付け親であったらしい。  


Posted by 北のフクロウ at 10:37Comments(0)読書