さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2020年08月26日

天国の銃弾 ピート・ハミル著 創元推理文庫

 アイルランド系アメリカ人ジャーナリストが取材でアイルランドのIRA幹部にインタビューに行き、そこで書簡をニューヨークのある人物に届けるよう頼まれる。その依頼を果たしたところ、相手は爆死する。取材時元IRAの活動家であった叔父も殺される。IRAとIRAに敵対するUVFと、アメリカの新興宗教団体が絡んで事件は発展する。UFVの手は主人公の誘拐事件を引き起こす。それが主人公の怒りを掻き立てる。
 IRAはアイルランドの過激組織で、カソリック系である。IRA抗争はカソリックとイギリス統治下のプロテスタントとの一種の宗教戦争であるが、かってアイルランドを支配していたイギリスから領土を奪い返す独立戦争が中途半端に終わり、アイルランド北部がイギリス支配となったままであることが根源にある。ようやくIRAとイギリス政府との和解が成立し、今は平穏になっているが、いつまた再燃するかわからない。それほど宗教戦争の根は深い。
 アメリカ国内にはアイルランド人が多数おり、とくに警察にアイルランド人が多くいる。聖パトリオットの日はアイルランド人のお祭りとして有名である。
 主人公はルーツがアイルランドであるため、IRAにはシンパシーを持っている。そんなところがIRA幹部に信頼されたようだ。しかしそのことがIRAに敵対するUVFの恨みを買ったようだ。  


Posted by 北のフクロウ at 12:22Comments(0)読書

2020年08月26日

ゴーストライター ロバート・ハリス著 講談社文庫

 イギリスの元首相が回顧録を出版するにあたり、ゴーストライターを雇い、まとめようとしていたところ、そのゴーストライターが変死し、主人公のゴーストライターに後継の白羽の矢がたった。前のゴーストライターの資料を読むうちに、ゴーストライターの死に不信を抱くようになる。そうこうするうちに元首相の政敵から元首相がシリア人を拘束し、アメリカの手で拷問にかけ、一人を死に至らしめることを、容認したという情報がリークされる。主人公も元首相をインタビューする過程で、真実は別なところにあることに感づく。どうもイギリス上層部にCIAの手が伸びているようだ。
 政敵が元首相の行動に不信を抱いた理由として、次の点を挙げている。
 1 英部隊を中東に展開。群や外交部が反対したにもかかわらず。
 2 復興に向けた契約でも、英企業に対して、ホワイトハウスからの代償を全く要求しない。
 3 アラブ世界と敵対する
 4 英国の地にミサイル防衛システムを配備
 5 500億ドルもするアメリカ製核ミサイルを購入
 6 米側に我が国の国民を引き渡し、米国内で裁判にかけることを認めるのに対して、逆は認めない条約を締結
 7 自国民の違法な拉致、拷問、拘禁はては殺害に加担
 8 英米同盟を100%支持しない閣僚は解雇 etc.
 これを読んで、ひるがえって日本はどうかと考えた。
 日米安保条約の元に、日本の政治上層部はアメリカの言いなりになっていないか。それは小説にあるように日本もCIAの支配下に置かれているのではないか。鳩山元首相が沖縄基地問題を取り上げてアメリカのご機嫌を損ねて退陣したり、日米通商交渉で弱腰なのも、そんなアメリカ支配の表れでないか。日本もミサイル防衛システムをあやうく買わされるところであった。
 小説は元首相がテロに会い、あえなく命を落とし、国際裁判沙汰は避けられたが、実は真相は別なところにあった。ここは作者の腕の見せ所で、鮮やかな結末に驚きを禁じ得ない。  


Posted by 北のフクロウ at 11:44Comments(0)読書

2020年08月19日

消滅遊戯 ロジャー・ホッブズ著 文芸春秋

 ロジャー・ホッブズはゴーストマンシリーズで「時限紙幣」を読んだ。その次作に当たるのが「消滅遊戯」。
 副題にあるようにゴーストマンで、世の中にその存在を消している泥棒である。その主人公の師匠に当たる女性犯罪者からSOSが来る。
 彼女が画策したサフアイア強奪が何者かに察知され、彼女がピンチに陥った。その事件を解明する途中でとんでもない別事件に遭遇する。
 果たして窮地を脱することができるか?
 マカオの闇社会が描かれ、犯罪社会の様子がよくわかる。  


Posted by 北のフクロウ at 07:00Comments(0)読書

2020年08月19日

眠る狼 グレン・エリック・ハミルトン著 ハヤカワ文庫

 先に読んだ「冬の炎」の作者の第1作。主人公バン・ショウはレンジャー兵士であったが、祖父から呼び出しを受け、休暇を取り故郷シアトルに帰る。その祖父は泥棒で、主人公も若いころ泥棒の手ほどきを受けたが、意見の相違があり軍隊に入った経緯があった。その祖父が大きなヤマを手掛けたが手違いで、瀕死の重傷を負う。犯人探しをするが、そこで発見した犯人は?
 主人公の複雑な生い立ちと、挿入された子供時代のエピソードが伏線となって、巧みなミステリーとなっている。  


Posted by 北のフクロウ at 06:47Comments(0)読書

2020年08月10日

「追われる男「」「祖国なき男」 ジェフリー・ハウスホールド著 創元推理文庫

 この2冊の冒険小説はレイモンド・インジェルラムというイギリス人の復讐劇である。
 彼は一人の女性がナチスに拷問の末、その復讐を図るためポーランドでヒトラーの暗殺を1938年に企てるが失敗し、ナチスにつかまり、拷問を受け瀕死の状態で逃れ、イギリスに戻る。しかしナチスの将校が執拗に追跡し、主人公が必死に逃げるのが「追われる男」。ただここでは暗殺未遂に終わった相手がだれで、その動機がなんであったかということは明らかにされず、主人公も誰であるかも明らかにされず、ひたすら逃亡する冒険小説である。
 その詳細が明らかになるのが2作目の「祖国なき男」で、個人的な理由で、ヒトラー暗殺を際立て、失敗したにもかかわらず再度ドイツに戻り、目的を達しようとするがそれも失敗する。一度捕まるが、拘留先が爆撃で破壊され、そこからイギリスに戻ろうと企てる。スエーデン軽油はスエーデンの理解が得られず、トルコ経由で、戻ろうとバルカン半島を南下する。各地のバルチザンの協力を得ながら、ドイツ軍やイタリア軍の追跡を逃れ、ようやくイギリス軍と接触するが、逃亡し最後はケニアの修道院で雌ライオンを殺害しようとして、刺殺に成功するが自身もかみ殺されてしまう。
 波乱万丈の生涯であるが、短いセンテンスで、場面転換が頻繁に行われるので、きわめてダイジェスト版を読むような小説である。恐らく詳細を書き込んだならば、4部作にでもなるような、中身の濃い小説である。  


Posted by 北のフクロウ at 17:50Comments(0)読書

2020年08月04日

硝子の暗殺者 ジョー・ゴアズ著 扶桑社ミステリー

 よく似た二人のスナイパーが敵味方となって相対する。
 大統領の暗殺をほのめかしたスナイパーとそれを阻止しようとするスナイパーの二人だ。
 大統領の暗殺は見事阻止したが、その際大統領首席補佐官が凶弾に倒れた。その暗殺者を追い詰めた際、不可思議な言葉を放って姿を消す。
 それに不振を抱いたスナイパーは暗殺の真相に迫る。最後意外などんでん返しがある。なかなか味のあるスナイパーものである。  


Posted by 北のフクロウ at 18:02Comments(0)読書

2020年08月04日

冬の炎 グレン・E・ハミルトン著 ハヤカワ文庫

 シアトルを舞台に、レンジャー出身の主人公が昔知っていた娘の行方探しを依頼され、訪ねたところ、ボーフレンドとともに殺されていた。
 犯人捜しをしていたところ、ロシアマフィアのとんでもない陰謀に遭遇する。しかも探していた娘は生きていて、陰謀の真相を握っているようだ。
 元部下と真相追求していたところ、恋人と部下といるところを、危うく爆殺されかけ、ますます殺人事件の解明が望まれる。
 果たして、犯人は誰か?生命の危機を脱出することができるか?  


Posted by 北のフクロウ at 17:47Comments(0)読書