さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2023年04月28日

冷血の彼方 マイケル・ジェネリン著  創元推理文庫

 タイトルからは本の内容がうかがえないので、この書名は失敗だと思う。
 原題はSiren of the Waters (水の精) Siren はギリシャ神話の半人半鳥の海の妖精で、近くを通る船の船員を歌声で誘惑し、座礁させたという。妖婦という意味もある。英語でサイレンであるが、セイレーンというと、妖精になる。
 この本では悪役が海の中で発見した遺跡の彫刻のセイレーンを意味し、ロシア人の売春婦もセイレーンとみなされている。
 主人公はスロバキアの女性警部で、自動車事故で亡くなった女性が売春婦であったところから、国際的な人身売買組織の存在をかぎつけ事件捜査を行う。一方で女性警部の家庭の不幸が平行して展開され、複雑な展開となっている。
 スロバキアという国も珍しいし、その国の歴史の不幸も小説の中で、垣間見える。スロバキアは1993年に独立した。その前はチェコスロバキアであった。チェコ、ポーランド、ウクライナ、オーストリアに隣接している四国ほどの面積の小国である。首都はブラチスラヴァ。
 ここには東欧3国(オーストリア、チェコ、ハンガリー)を回った際、通過した記憶がある。
 共産主義国であった時代から民主化して今はEU加盟、NATOに加盟を果たしている。
 女性警部の家庭は共産主義下にあって崩壊した。夫が反政府運動に走り、資金稼ぎのために銀行強盗迄犯し、犯罪者となる。一人娘をアメリカの親族に逃さざるを得なかった。父親が母親に殺されたと信じて、娘は母親を許そうとしない。事件が解決した際、理解を得られないまま、娘は自動車事故で亡くなってしまう。本筋の人身売買じけんよりも女警部の家庭の不幸の方が印象に残る小説であった。
 シリーズになっているから、次作も読んでみたい。  


Posted by 北のフクロウ at 08:53Comments(0)読書

2023年04月24日

ペーパー・マネー  ケン・フォレット著 新潮文庫

 ケン・フォレットが「針の眼」で有名になる前の直前の作品。
 閣僚脅迫、古紙幣の強奪事件、企業買収など複数の事件が1日に凝縮されていて、最初読むものを戸惑わせる。
 複数の視点で物語が展開するところは「針の眼」と共通している。作者が自身一番のプロットというほど、最後の帰結迄入り組んでいるが、凝りすぎて最初とっつきにくい。このあたりがさほど評価されない所以であろう。しかしよく読むと複雑なプロットが巧妙には張り巡らせていることがわかる。
 小品ながらケン・フォレットの魅力いっぱいの作品である。  


Posted by 北のフクロウ at 06:30Comments(0)読書

2023年04月24日

ピラスター銀行の清算 ケン・フォレット著 新潮文庫

 ケン・フォレtットの19世紀末のある銀行を舞台にした風俗小説、ロマンス小説、冒険小説である。
 長編であるが、前半の部分はさほど面白くない。主人公の学校時代に起きた殺人事件が背景にあって、犯人と思われる悪者がいかに銀行の一族に取り入るかの策略が描かれている。主人公は銀行一族にありながら、異端で下積みから働き始める。せっかく目を出しかけたところで、アメリカの支店に追いやられる。しかしそこで業績を上げ、ロンドンに戻ってくる。この辺りは当時のロンドン金融市場の事情を知るうえで面白い。
 この小説の面白さは1000ページにも及ぶ長編の最後100ページで、事件の真相が暴かれ、主人公が反撃したあたりからである。
 最後はケン・フォレット特有のハッピーエンドでの締めくくりで、因果応報、勧善懲悪の結末となる。
 今一つ物足りないのは、主人公の判断力の不足と、女主人公の活躍が弱い点である。良くも悪くも彼の小説では女主人公の個性や活躍が魅力である。  


Posted by 北のフクロウ at 06:17Comments(0)読書

2023年04月17日

後悔病棟 垣谷美雨著 小学館文庫

 垣谷の「寧年後オyジ・・・」が面白かったので、その関連で「後悔病棟」を借りた。
 当てるとその人の考えていることがわかるという聴診器を拾った主人公の女医さんが次々と末期がん患者の真相を聞き出すという物語。荒唐無稽であるが、面白い着想である。そういえば最近病院で聴診器を当てられたことがない。最近の医者は検査結果をパソコンの画面で見て、診断することが主務で、聴診器を持った医者をとんと見かけなくなった。
 この小説では魔法の扉が出てきて過去に戻ることができる。青と黄ああすれば人生は変わるだろうと思われる場面が出てきて、そこからの人生を見ることができるのだ。患者さんはそれに満足して、あの世に行くことができる。
 ありそうもないことだが面白い着想の小説である。  


Posted by 北のフクロウ at 05:59Comments(0)読書

2023年04月14日

モジリアーニ・スキャンダル ケン・フォレット著  新潮文庫

 ケン・フォレットが「針の目」で有名になる前の作品。
 モジリアーニの贋作をめぐる「軽くて、陽気で、爽やかで、元気な、興奮させる小説」という当時の書評家の言葉通りの作品。
 複数の物語が最後収斂していく様はさすがケン・フォレットというところだが、重厚さが欠けるところはまだ初期の作品であることをうかがわせる。
 美術物として興味深い。  


Posted by 北のフクロウ at 15:32Comments(0)読書

2023年04月14日

第三双生児 ケン・フォレット著 新潮文庫

 1996年の作品でありながら、人間のクローンの問題をテーマにしているところが、作者の目の付け所の斬新さを感じる。
 受精卵を7分割して8人のクローンができるかどうかわからないが、そんな技術を開発した結果、巻き起こす事件。最初双生児の犯罪かと思われたが、どうも3人目がいるらしい。そんな事件に双生児の研究をする女性研究者が巻きこまれる。ミステリーと言いながら、犯人は明らかにされているし、善人と悪人が明確で、安心して読んでいられる。さいごドタバタ喜劇のようになるのは残念。  


Posted by 北のフクロウ at 09:17Comments(0)読書

2023年04月08日

バーニング・ワイヤー ジェフリー・ディーヴァー著 文芸春秋

 実はこの本はかって読んだことになっているが、全く記憶がない。あらすじに見覚えがないのだから、驚くばかりだ。また何年かしたら、読み返し手見ると面白いと思う。
 身体障碍者の犯罪捜査人リンカーン・ライムと宿敵ウオッチメーカーとの対決が本筋だが、発電所を舞台に計画殺人事件が起き、犯人追求が侵攻する。アッと驚く真犯人がいることはディーヴァーのいつもの通りだだ、犯人との一対一の対決があるところが見せ場となっている。
 ミステリーの爪として犯人の詳細を述べることができないが、いつもながらライムの緻密な問題解決に、圧倒される。
 21年8月に読んだ読後感は下記の通りであった。

 リンカーン・ライムシリーズの第9作目。
 ディーヴァーのミステリーは犯人と思われる人間が犯人でなく、物語が複数あって最後に一つになって意外な人間が犯人となるどんでん返しが売り物である。
 バーニング・ワイヤーでは電力会社の社員が自分がガンになったのは会社が悪いと思って電気事故を起こして無差別殺人事件を起こしていると思わせておいて、実は・・・・、という流れだ。もう一つのストーリーは宿敵ウォッチメーカーがメキシコに現れて、いかにも、捕まりそうになるが、そう簡単ではない。
 電気の知識は半端ではなく、これを真似られると大量殺人ができそうに思えるところが怖い。
 リンカーン・ライムという下半身不随の特別捜査官の鑑識力はすごく、その推理には敬服するが、人間的には偏屈なところがある。そこが魅力であるが、相棒はたまらない。アメリア・サックスには同情する。なんでリンカーンなのか。世の中にはたくさん男がいるのに・・・・。  


Posted by 北のフクロウ at 07:10Comments(0)読書

2023年04月08日

ブラック・ワスプ出動命令 トム・クランシー&スティーヴ・ピチェック著 扶桑社ミステリー

 トム・クランシー亡き後、オプセンターシリーズはピチェックが書き継いでいる。その第6作目。
 テロリストの活動を見逃したということで、オプセンターに解散命令が下される。そしてセンター長のチェイス・ウイリアムズには新たな組織ワスプによるテロリストの捕縛ないしは殺人の命令が極秘に下される。ワスプとは戦時急速攻撃配置(ウォータイムアクセレレイテドストライクプレースメント)の略で、ウイリアムズを含めて、4人のメンバーで、極秘に任務を遂行しようというもの。現在の情報戦を駆使して、敵に迫る手法は大規模な戦力を必要としない。一方で超人的な個の力が必要になる。4人の力が必要最小限度というところだろう。  


Posted by 北のフクロウ at 07:00Comments(0)読書

2023年04月08日

定年オヤジ改造計画 垣谷美雨著 祥伝社文庫 

 定年後熟年離婚が増えているという。オヤジが家でうろうろしているのが奥さんにとってウザったいのだそうで、うつ病になったり、体に変調をきたすそうだ。長年暴君的なオヤジに付き合っていたのが、我慢の緒が切れたという状態になるらしい。
 男にとってみれば、会社生活でボロボロになってやっと自由の時間を持てたので、これから女房と海外旅行にでも行こうかと張り切っていたのに、なんだということになる。そのあたりの平均的なサラリーマン男性の定年後の在り方のついて身につまされる話が詰まっている。
 そういう事態にならなかったことに、やれやれである。  


Posted by 北のフクロウ at 06:48Comments(0)

2023年04月03日

コード・トゥ・ゼロ ケン・フォレット著   小学館文庫

 主人公は何者かによって記憶をなくさせられている。アメリカの人工衛星の打ち上げが何者かによって妨害されようとしている。主人公は何者かによって殺されようとしている。このミステリーが読者をわくわくさせる。
 心憎いばかりの筋の展開である。でも比較的悪者の姿は明らかになっていて、あとはどう解決するか展開を見守るだけでよい。
 主人公は二人の女性の間で好みが揺れ動く。本命はいるが別の女性と結婚している。このあたりがややこやしい。
 スパイものはケンフォレットの得意とするところであり、水を得た魚のように面白い作品となっている。  


Posted by 北のフクロウ at 13:51Comments(0)読書