さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2024年01月26日

ホルモー6景 万城目学著 角川書店

 万城目正は本年度の直木賞作家に選ばれた中のひとり。図書館で探したらこの一冊が目についた。
 まず、ホルモーなる言葉が分からない。何やら京都にある大学のサークルが競い合う鬼の出るゲームのようである。これを理解するには第1作目の「鴨川ホルモー」を読まねばならないのかもしれない。
 氏は京都大学法学部卒のエリートであった。某繊維会社に就職し、サラリーマン生活を送っていた。それが作家の道を歩むようになって、ホルモーなる奇妙な小説を書くようになった。京都という土地柄の持つ古き都のイメージには魑魅魍魎の跋扈する怪しげな世界がある。それと現代を結び付けて、誰も描けない世界を表現した。文章は軽妙であり、面白いが直木賞に値するかどうかを問われるとクエスチョンマークが付く。
 6度候補に挙がって、ようやく選ばれたというところに選考委員の迷いがあるように思われる。  


Posted by 北のフクロウ at 08:15Comments(0)読書

2024年01月24日

警鐘 リー・チャイルド著 講談社文庫

 またやってしまった。この小説はかって読んだことがあったのだ。買うときに読んだかどうか確認したつもりであったが、帯書きを読んでも記憶がなかったので、安心して買った。しばらく読んでも既読の気がしなかった。しかし記事一覧で確認したところ、2022年8月24日に読んでいるではないか?しかも恐ろしいことにが蘇らず、あたかも初めて読むように内容が新鮮なのだ!いかに記憶力が衰えていることか。
 最後のほうになって、若干記憶がよみがえってきた。どんでん返しが面白い。最後まで騙されて読んでいた。おそらく3度目はないと思うが、あてにならない。リー・チャイルドのジャック・リーチャーシリーズは9作あるということだから、また同じような目に会うかもしれない。
注意しよう。以下前回のブログをコピーする。2度同じことを書く気がしない。
 「ニューヨークから私立探偵がリーチャーを捜しに来るが、何者かに殺されてしまう。依頼主を探すためにニューヨークで出かけると、元上司もガーバー将軍であることが判明する。彼は心臓病でリーチャーに会う前に死亡しており、ニューヨークに行った折にはちょうど彼の葬儀であった。そこで将軍の娘の弁護士に再会し、ロマンスにおちいる。ガーバーの依頼は病院で出会ったやはり心臓病の老夫婦の息子がヴェトナムで行方不明になっていて、帰国を果たしていないので、真相を調べてほしいとのことであった。そこで、ヴェトナムでヘリコプターの墜落事故で、息子が行方不明になった真相を探るうちに、軍が何かを隠していることに気が付く。一方で倒産間近の会社を舞台にした詐欺事件が進行していて、その犯人がヘリコプターの墜落で生き残った息子らしいとにおわせる。大きなどんでん返しで真実が明らかになる。」  


Posted by 北のフクロウ at 08:14Comments(0)読書

2024年01月20日

虚構金融 高嶋哲夫著 実業之日本社

 高嶋哲夫の経済、政治、司法小説。
 こんな小説も書けるのだ、と高嶋哲夫の幅の広さに敬服する。
 ある銀行と政治家の贈収賄事件を捜査する検察官が主人公。その捜査の過程で、財務省官僚と政治家が何者かによって殺される。
 そこには日米間の密約があった。
 いま日本は東京特捜部の自民党裏金事件捜査で、騒がしいが、この小説では銀行合併を巡る金融庁の大臣、金融庁長官に対する銀行の贈賄が表の事件である。ここでは銀行頭取の懐刀が逮捕され、自白が採れ、事件のほうは検事側の勝利となるが、官僚と政治家の殺人事件はアメリカからの暗殺者が犯人として明らかにされる。その裏にはアメリカ国債購入の密約が日米間にあって、それを暴露されることをアメリカが嫌ったということになっている。
 いま日本の財政は厳しいが、ここでアメリカ国債を政府が売ったらどうなるだろうか。
 かってアメリカ国債売却を政治家がほのめかしただけで、アメリカ国債が暴落し、ドル安、円高に振れたという。今の円安を打開するためにはアメリカ国債を売って、円高に誘導するのもひとつの解決策かもしれない。
 検察検事を主人公にする小説は少ないが、こんな人間性あふれる人物が検事側に少ないのが小説にしづらいのであろう。  


Posted by 北のフクロウ at 09:42Comments(0)読書

2024年01月16日

紅い砂 高嶋哲夫著 幻冬舎文庫

 高嶋哲夫はこんな小説を書くんだという意外感を持ちながら読んだ。
 中米の架空の国、コルドバに起きた革命事件。メキシコ国境で起きた避難民に対する発砲事件で軍を追われたアメリカ軍兵士が主役。
 アメリカの資産家が私兵を組織して、コルドバの革命軍のクーデターを計画する。それに参画するのが上記のアメリカ元兵士。革命は微力な兵力ながらリーダーのカリスマ性もあって成功する。最後にドローンでリーダーの呼びかけがあって、政府軍、革命軍の銃撃戦が停止するあたりは、本当にそんなことができるのかなという疑問が生じるが、そこは小説、日本人作家のミリタリー作品としてはこんなものかなと思う。
 中南米の政争、麻薬組織、アメリカの対応などもっと深い背景があるので、こんな革命騒ぎがすんなり成功するとは思えない。ましてや資産家の私的な復讐劇が動機とあっては、ますますである。
 しかしながら高嶋哲夫の小説のジャンルを広げようとする努力には敬服する。  


Posted by 北のフクロウ at 08:56Comments(0)読書

2024年01月12日

官邸襲撃 高嶋哲夫著 PHP文芸文庫

 高嶋哲夫は災害や原発事故などパニック小説で知られている。
 今回は日本の官邸がテロリストに襲われるというショッキングな事件を題材とした。しかし自然災害に比べてスケールは小さく、いかに大事件化するかに苦労しているようだ。ミステリーとしてはあまり成功していない。
 ただ、シェールオイルの環境汚染を犯人側の動機の一つにしているところは高嶋らしい。
 大統領の隠し子の存在などいかにも日本的で、大統領の苦悩は嘘くさい。本物の大統領なら、隠し子の存在など無視、あるいは抹殺しようとするであろうし、国務長官の行動など、無理がある。主人公の存在をテロリストが気が付かないはずがなく、いかにもヒロインらしく扱っているが、無理がある。
 高嶋はもっと大きなパニック小説が似合っている。  


Posted by 北のフクロウ at 08:32Comments(0)読書

2024年01月09日

壊れた世界で彼は フィン・ベル著 創元推理文庫

 作者はニュージーランド在住の南アフリカ人。
 ニュージーランドのミステリーというのは初めて読むが、レベルは結構高い。
 原題は「GOOD HOT HATE」(改題する前はThe Easter Make Believers )。イースターにニュージーランドには珍しい大雪が降ったころに事件が起きた。善良な一家の家にギャングが立てこもり、取り囲んだ警察の目の前に爆発事故が起き、ギャングたちは死亡、家族は母親が重症、父親はアギャングのひとりに拉致されて行方不明、子供は無傷で助けられた。この不可解な事件に二人の組織犯罪対策本部の刑事が取り組む。なぜギャングが複数人立てこもったのか。ギャングのひとりが父親だけ連れて逃亡したのか。謎である。
 ニュージーランドの南島はかって金が採れ、中国人やスコットランド人や世界中から人が集まった時期があったという。その痕跡が鉱山の坑道の形で残されているという。この坑道が事件のカギを握る。事件は意外な展開を見せ、予想外の犯人が見つかる。しかし坑道に残された刑事のひとりは最後に死を選択する。これも意外な理由である。Good Hot Hateのタイトルが意味するところは深い。
 日本のタイトルは「壊れた世界で彼は」というが、これの意味するところも深いが、これを読んだだけでは意味不明である。
  


Posted by 北のフクロウ at 08:21Comments(0)読書

2024年01月04日

姑の遺品整理は、迷惑です 垣谷美雨著 双葉文庫

 垣谷美雨は日常の社会問題を軽妙に描く作家である。
 ここでは義母の遺品整理に苦労する姿を軽妙に描いている。
 断捨離は私にとっても大問題で、いかに見綺麗にして死ぬかがテーマであるが、遅々として進まない。
 この小説を読むと、早く何とかしなければと思うが、なんともならない。最後は清掃業者に処分してもらうことになろう。
 少なくとも写真だけは整理した。あとは本だが、売れるものは売ったので、後はごみに出すしかない。衣類は少しずつ燃えるごみとして処分していく予定だ。
 今年のテーマは身辺整理を進めることにしよう。
 この本を読んだ結論がそれになった。  


Posted by 北のフクロウ at 08:42Comments(0)読書

2024年01月04日

追跡 警視庁鉄道警察隊 高嶋哲夫著  角川春樹事務所

 こちらも高嶋哲夫の著作。パニック以外のジャンルで、しかも警察ものというのが珍しい。警察ものでも本流の刑事ものではなく、鉄道警察隊というのも高嶋らしい選択。事件もすりや切り裂き事件と地味なもの。新人警察官の執念の事件解決の経緯が人間臭く描かれている。  


Posted by 北のフクロウ at 08:30Comments(0)読書

2024年01月04日

神童 高嶋哲夫著 幻冬舎文庫

 高嶋哲夫は震災、津波、台風、原発事故などパニック小説が有名だが、将棋の世界を世界を描いたのが本作で、新境地を開いたもの。
 二人の天才が互いに将棋の世界に飛び込んだが、一人は将棋の世界で7冠を達成するまで成長する。
 一人は人工知能で世界的に有名な学者アになっている。
 その二人を主人公に、子供時代と人間対コンピューターの対決の現代を交互に描いて、二人の対決を盛り上げている。
 もう一つの物語として、学者の実家の情報機器会社の買収問題が絡む。米国の大手と組むか、中国の会社と組むかの選択を迫られる。
 こちらは学者の弟が中心となっているが、日本の中小企業の在り方として興味がある。
 人間対コンピューターの対決は結論を出してはいないが、昨今の藤井8冠の活躍を見ると、まだ人間のほうが上ではないか後思う。
 最も藤井7段はコンピューターで将棋を相当研究しているというから、コンピューターのほうが強いかもしれない。  


Posted by 北のフクロウ at 08:25Comments(0)読書