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読書・コミック  |札幌市北区

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2019年05月26日

封印された系譜 ロバート・ゴダード著 講談社文庫

 今回の歴史的事実はロシアロマノフ王朝の皇女かどうかで話題提供したアナスタシャである。
 主人公の友人の祖父がニコライ2世がイギリスを訪問した際に接触があり、ロシア皇女の指紋採取をしたことが、アナスタシャが本物の皇女かどうかの決め手となるため、指紋の存在をめぐって争いが起きる。アナスタシャは映画でイングリッド・バーグマンが演じ、主題歌とともに話題作となたことを記憶している。DNA鑑定も行われたが、裁判では偽者との判定であったようだが、いまだに真贋の決着はついていないようだ。ロマノフ王朝の隠し財産があり、それを利用してデンマークの有数の世界企業となった謎の社長の存在が不気味であり、主人公が謎の究明に振り回されて、パリ、コペンハーゲン、ヘルシンキ、ストックホルムなどのヨーロッパの都市をめぐる。いずれも訪れたことがあり、親しみを覚えた。
   


Posted by 北のフクロウ at 16:05Comments(0)読書

2019年05月22日

悠久の窓 ロバート・ゴダード著 講談社文庫

 ロバート・ゴダードのフアミリーもの。考古学者の一族で、先祖が東ローマ皇帝の子孫。その一族に起きた殺人事件である。
 歴史事件としてはテンプル騎士団がキリストの遺物をエルサレムの地から持ち帰って、どこかに隠したという、どこかで聞いた話がまた出てくる。ここでは教会の最後の審判のステンドグラスが一族の屋敷に隠されているのではないか、という話が出てきて、そこに数で居る考古学者を老人ホームに移して屋敷を高額で売り、それを子供たちが分けようとするが、考古学者が頑として断る。しかしその家族会議の後、考古学者が殺されてしまい、誰が犯人かという謎がうまれる。ゴダードのミステリーは最後の100ページくらいから急展開し、謎が解明されるが、そこに至る過程は二転、三転して目が離せなくなる。ただしステンドグラスの行方がどうなったのか、の謎は解明されていない。キリストの遺物がそれを積み込んだ船が遭難して、行方不明になったというがそれも中途半端な話となっている。
 もっと違う展開を作者は考えていたのだろうか。  


Posted by 北のフクロウ at 12:27Comments(0)読書

2019年05月15日

闇に浮かぶ絵 ロバート・ゴダード著 文春文庫

  ゴダードの初期の作品は歴史ものが多い。
  ここでも時代は19世紀末のイギリス。
  イギリス貴族の跡継ぎが結婚を前に、自殺をほのめかして失踪する。
  11年後、その失踪者を名乗る男が登場し、貴族の正当な後継者であることを要求する。
  本物であるか、詐欺師であるか裁判で争うことになる。
  今の時代であれば、DNA鑑定をすれば決着のつく問題であるが、そこは19世紀。
  裁判では、元のいい名付けと伯父の証言があって、本物と裁定されるのだが・・・・・・。
  全般、本物か詐欺師かがハッキリせず、いらいらする展開だが、3/4を過ぎるあたりから,2転3転して緊迫感を増す。
  ゴダードの最近の作品のテンポのよさに比較すると、重厚な物語で、読んでいて息苦しくなる。
  最後は意外な結末で、イギリス貴族社会の閉塞性と近親相姦にやりきれなさを感じる。
  


Posted by 北のフクロウ at 07:15Comments(0)読書

2019年05月05日

パイレーツ マイクル・クライトン著 早川書房

  2008年に66歳の若さで、ガンで亡くなったマイクル・クライトンのパソコンにあったという遺作。
  カリブ海のイギリスの私掠船船長を主人公とする冒険小説。荒い展開ながらクライトンの面白さが伺える作品で、映画を意識して盛りだくさんの内容となっている。映画化の計画があるというが、どうなったであろうか。
 マイクル・クライトンは「恐怖の存在」で、地球温暖化は謀略であるという見解を示し、物議を起こしたが、最近の温暖化の知見をどう評価するであろうか?  


Posted by 北のフクロウ at 11:56Comments(0)読書

2019年05月01日

オリエント急行を追え 西村京太郎著 祥伝社文庫

 西村京太郎は日本を代表するミステリー作家。十津川警部を主人公にしたシリーズを中心に500冊以上のミステリーを書いている。職人芸のミステリー作家といってよいだろう。従ってアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」に啓発されてこの「オリエント急行を追え」を書いたことは想像に難くない。しかしミステリーとはいえ、あまりにイージーな作品である。厚みと深みにかける。武器密輸をオリエント急行に絡め、日本の暴力団が資金源などスケールが小さい。  


Posted by 北のフクロウ at 09:57Comments(0)読書

2019年05月01日

リオノーラの肖像 ロバート・ゴダード著 文春文庫

 ロバート・ゴダードの初期の作品はイギリス文学の伝統の香りを感じさせる。この「リオノーラの肖像」ではハロウズ家の歴史が3代に渡って描かれる。主人公のリオノーラの語る1部、ウイリス(トム・フランクリン)の語る第2部、またリオノーラの語る第3部の構成になっていて、ラルフ・モンペッソンの殺人事件がミステリーとなっている。戦死したリオノーラの母リオノーラの夫ジョン・ハロウズ、その戦友、トム・フランクリン、母リオノーラの友グレイスなど複雑な人間関係が織り成していて、最後にどんでん返しでラルフ殺人の真犯人が分かる。
 重厚な作風でついつい引き込まれてしまう。イギリスコーンウエルズ地方の風景が作風とあっている、というかこの風景が生み出した作品といえるかもしれない。  


Posted by 北のフクロウ at 09:46Comments(0)読書

2019年05月01日

閉じられた環 ロバード・ゴダード著 講談社文庫

 ロバート・ゴダードはプロットの作家といわれるが、この作品でも展開が早い。
 二人の詐欺師が見事にだまされる。一人は色仕掛けで、恋愛関係となり、駆け落ちの途中で殺される。なおかつ国際投資家の殺人犯にされる。その相棒は真犯人を見つけるためにあわや第2の犠牲者になりかける。第一次世界大戦の原因はオーストリアの皇太子夫妻がサラエボで暗殺されたことに端を発するが、そこにはイギリス人の国際投資家を中心とする組織の策謀によるという。話が荒唐無稽な方向に進むが、ありえない話ではない。昨今の国際紛争には世界の武器産業の陰謀があると考えられなくも無い。武器の供給が無ければ、テロリスト集団や、テロ国家の成立がありえない。しかし大国は兵器産業を国家産業として擁護する。その貿易も盛んだ。当然密輸産業も生まれる。武力紛争が無くならない訳だ。  


Posted by 北のフクロウ at 09:26Comments(0)読書

2019年05月01日

オリジン ダン・ブラウン著 角川文庫

 「ダヴィンチ・コード」などのミステリーで有名なダン・ブラウンの最新作。
 おなじみのロバート・ラングドンを主人公として、「われわれはどこから来たのか」「われわれはどこに行くのか」という哲学、並びに宗教の根源的な疑問に真正面から取り組んだ対策。そこはミステリー作家、天才的なコンピューター学者エドモンド・カーシュの殺人事件の解決を通して、その解明に迫る。
 われわれはどこから来たのか。この問いに対して熱力学第2法則に鍵があるという。熱力学の第2法則はエントロピー則とも言われ、エネルギーは拡散することを示している。世界はエネルギーの集中した領域を見つけると、そのエネルギーは拡散する。自然はーー無秩序を促すためにーー秩序の小さなポケットを作る。そうしたポケットはシステムの混沌を高める構造を具え、それによってエントロピーを増大させる。生物はエネルギー散逸の極めて有効な手段であり、生物の存在の意義がある。原子が分子になり、分子がアミノ酸になり、アミノ酸が蛋白になり、塩基性蛋白がヌクレオチド隣、生命となる。一連の過程はいずれもエネルギー散逸の方向を示しているという。このような自然科学的な方向性は神が自然を創り、人間を創造したという宗教観にとって受け入れがたいものであり、反発を招く。これがカーシュの殺人につながる。
 ラングドンはカーシュのパスワードを紐解き、「われわれはどこに行くのか」という疑問の解答を得る。
 「われわれはどこにいくのか」
 新しい種が生まれる。それは人類を飲み込んで生まれた種で、「テクニウム」と名付けられた。生物学的には第七の界である。
 テクノロジーと人類が融合したシュといえる。AIがそのひとつの形であるかもしれない。
 この小説では、カーシュの生み出したウィンストンという人工頭脳が重要な役割を果たすが、人間とこのような人工頭脳がひとつの種を生み出す世界がわれわれの行き着く世界なのかもしれない。
   


Posted by 北のフクロウ at 09:07Comments(0)読書