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読書・コミック  |札幌市北区

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2015年02月28日

テンプル騎士団の聖戦 レイモンド・クーリー著 早川書房

 前作「テンプル騎士団の古文書」と同じ主人公が活躍する。
 キリスト教の福音書は後世の信者によって書かれたものだが、それ以前に原典があったのではないかという事は、今でも言われるし「死海文書」のようなものも出ている。ここでキリストの日記が出てきたならば・・・・・。これをめぐる争いは想像を絶する。舞台がイスタンブールやカッパドキアなどトルコが出てくる。コンヤも重要な舞台となっており、いずれもトルコ旅行で行ったことのあるところなので、読んでいて楽しかった。テンプル騎士団はよくミステリー小説に出てくるが、その起源が良く分かる。また異端として迫害されるが、教皇とフランス王がテンプル騎士団の財産目当てであったことも、明らかになっている。
 キリスト教がローマ帝国のコンスタンチヌス帝時代に認められたが、その歴史的決断がニカイアでなされた。このあたりの歴史をうまく織り交ぜて、この小説が出来上がっている。  


Posted by 北のフクロウ at 09:01Comments(0)読書

2015年02月28日

天使のゲーム カルロス・ルイス・サフォン著 集英社文庫

 著者は前作「風の影」で世界的ベストセラーとなった。この作品も同じくバルセロナを舞台としていて、「センペーレとその息子書店」や「忘れられた本の墓場」などが出てくるが、主人公は別である。ミステリーというより幻想小説と言った方が良い。その独特な雰囲気が読者を魅了するのだろう。
 バルセロナの旧市街の怪しげな雰囲気は20年ほど前、ツアーで行った時にピカソ美術館にいく途中で味わった。「このあたりは危ないところです」と言ったガイドの言葉を思い出す。メイン通りのランブラス通りで、ツアーのメンバーの一人がひったくりにあったのでも分かる通り、治安はいいとはいえなかった。今は失業率が上がり、もっと治安は悪いのではないか。
 4部作の3作目は「天国の囚人」という。これも楽しみだ。  


Posted by 北のフクロウ at 08:40Comments(0)読書

2015年02月15日

札幌交響楽団名曲シリーズと第577回定期演奏会

尾高忠明指揮の音楽監督としては最後の演奏会を続けて聴く。
名曲シリーズは「響きの翼に」と題して、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とラフマニノフの交響曲第2番。
この曲を引っ提げて台湾に演奏旅行に行く。
ヴァイオリンは札幌出身の成田達輝。32歳の若手だが、なかなか優れたヴァイオリンニストである。
その技術はアンコールで弾いたパガニーニのパプリスによく出ている。3曲もアンコールを弾くソリストも珍しい。
札幌のファンに対する大サービスであった。
ラフマニノフの第2番の交響曲はいかにもラフマニノフらしい曲。あまりチャイクフスキーは聴かないが、尾高さんはラフマニノフはお好きらしい。

定期演奏会は文字通り最後の演奏会である。しかもシベリウスチクルスの最後の3曲で、交響曲5,6,7番を連続演奏した。
中でも6番はシベリウスにしては明るい曲奏で、3曲の中では一番気に入った曲だ。シベリウスは2番の交響曲が有名だが、6番はもっと演奏されてよい曲だと思う。

この演奏会を機にコンサートマスターの伊藤さん、フルートの森さん、テインパニーの武藤さんが対談することが発表された。
後任がだれかは明らかにされていないが、伊藤さんの公認が田島さんだとすれば、森さん、武藤さんの後任は誰か興味の持たれるところである。

新年度常任指揮者のポンマーさんといい、アシュケナージの指揮、広上さんの指揮といい、楽しみである。
小山実稚恵さんのピアノ(しかもラフマニノフのピアノ協奏曲第3番!)も聴くことができる。  


Posted by 北のフクロウ at 21:32Comments(0)

2015年02月07日

テロリストの誓約 ディヴィッド・マレル著 早川書房

 著者はランボーの原作者で有名で、冒険小説の作家である。
 原題は「The covenant of flame」、炎の誓約、とでも訳そうか。それを「テロリストの誓約」としたのは、陳腐である。たしかにテロリストは出てくるがなかなかどうして歴史的な意味合いが深い。キリスト教とミトラス教(ミトラ教ともいう)との争いに遡る。ローマ時代コンスタンチヌス帝によってキリスト教が公認されるが、それ以前にはローマにはミトラス教があった。中世キリスト教は異端尋問を行うが、この小説では異端尋問で迫害を受けたのがミトラス教徒であるとされる。これが現代まで生き延び、秘密結社として環境に悪影響を及ぼす企業、人物を攻撃の対象とする。この意味ではテロリストであるが、対象とする相手も悪者であるから、正義の人と言う事も出来る。
 一方ミトラス教徒に敵対する異端尋問者は秘密結社の絶滅を図る。この両者の間にあって主人公の環境保護出版会社の女記者がさまざまな危害を被る。それを助ける警察官がいる。この小説の終わりに両グループの善悪がどちらかわからないと主人公に言わしめている。これはミトラス教とキリスト教のどちらが善で、どちらが悪かという問いでもある。
 マレルは米英文学を専門とする大学教授であるが、学者の傍ら冒険小説を書いた。才能にあふれた人のようである。
 この作品は1991年の作であるから、まだ携帯電話は出てこない。携帯電話のある、なしで小説の在り方が随分違う。  


Posted by 北のフクロウ at 09:55Comments(0)読書