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2018年02月07日

暗殺の年輪 藤沢周平著 文春文庫

表題作品は藤沢周平が直木賞を受賞した作品。上役の差し金で敵対する家老を暗殺せざるを得なくなった下級武士の苦悩をテーマにしている。主人公の父親も上司の指示で暗殺未遂を起し、妻女の働きで尾家断絶を免れたという過去を有する。
 藤沢作品によくあるパターンで、その魁となる作品であったろう。多に作品の短編が掲載されているが、どれも良くあるパターンで、結末がすきっとしていないのがどの作品にも共通。この余韻がファンにはたまらないのであろう。  


Posted by 北のフクロウ at 15:54Comments(0)読書

2018年02月07日

尖閣激突 マイク・メイデン著 角川文庫

  尖閣諸島を中国は中国領土と主張している。日本は日米同盟に頼るほかなすすべが無い。もしも中国がアメリカおそるるに足らずと判断した場合は、実効支配に踏み切るかもしれない。そんな未来を予見させる軍事ミステリーである。アメリカをどのように引き込むかを画策する日本の政治家がいる。アメリカはドローン武力部隊を民間会社に依頼し、サイバー攻撃で中国軍を混乱させ、なんとか勝利する。
 恐らく近未来戦争はドローンと、サイバー攻撃と、ミサイルが主力となり、地上戦の無い戦争になるのではないか、そのような未来図を創造させる小説である。日米安保の危うさを訴えている作品である。  


Posted by 北のフクロウ at 15:45Comments(0)読書

2018年02月07日

キャンバス サンティアーゴ・パハーレス著 ヴィレッジブックス

 珍しくもスペインの作家の作品。
 著名な作家が、自作を競売に掛けることを決断する。その席で自作に満足できない点を発見し、取り戻そうとするが一旦プラド美術館の手に渡った作品を、作家の手に戻すことが出来ない。そこで名画泥棒に依頼し、一時的に手元に戻し、その間は知人の贋作者に依頼した贋作を代わりにかけておくことにする。画家の息子は最初反対するが、そのうち親の意向に従うことに同意する。
 しかし最後は思わぬ展開となる・・・・・・・。
 ミステリーではないが、最後の落ちはミステリアスであるところが、気に入った。  


Posted by 北のフクロウ at 15:32Comments(0)読書

2018年02月01日

札幌交響楽団第606回定期演奏会

 マックス・ポンマーさん指揮の、札響定期最後の演奏会。
 キタラ 1月26日(金)
 プログラムは
 ラウダ・ヴァーラ作曲 鳥と管弦楽のための協奏曲「極北の歌」
 モーツアルト作曲 ピアノ協奏曲第24番
 メンデルスゾーン作曲 交響曲第3番「スコットランド」
ピアノは小菅優
 1曲目は鳥の音響とオーケストラが奏でるという珍しい作品。フインランドの森を想起させる印象深い作品であった。
 2曲目は小菅優のピアノが聴かせた。アンコールの無言歌は3曲目のメンデルスゾーンを意識したのであろう。
 ピアノは力強く、一瞬これがモーツアルトかと耳を疑わせる音であった。ベートーヴェンを思わせる。
 スコットランドは札響の音楽に会っていると思う。ボンマーさんの指揮は派手ではないが、的確にメンデルスゾーンを表現していると思う。
 名曲シリーズでもう一度聞くことが出来るので、楽しみである。  


Posted by 北のフクロウ at 21:23Comments(0)音楽

2018年02月01日

ノーベルの遺志 リザ・マークルンド著 創元推理文庫

 ノーベル賞の記念舞踏会の会場で、殺人事件が起きる。当初受賞者が標的と思われたが、実はノーベル賞の選考委員会の事務局長が標的の殺人事件だったことを女性新聞記者が見い出す。
 女流作家だけに女性主人公に対する思い入れが激しい。家庭問題も事細かく描写されている。スエーデンでも女性の社会進出は難しい問題があるのだろう。幹細胞を巡るノーベル賞の受賞にはいろいろ異論があったようだ。これをひとことでいうと、創造論者と進化論者の争いといえるかもしれない。
 ノーベルの生涯がちらちら出てくるが、私生活は幸せではなかったようだ。とくに女性関係では・・・・。一度ノーベルの伝記を読んでみようと思う。  


Posted by 北のフクロウ at 21:03Comments(0)読書

2018年02月01日

名画狩り トマス・ホーヴィンク著 文春文庫゙

  作者はメトロポリタン美術館の元館長。さすがに美術界について詳しい。
  ベラスケスの名画「侯爵令嬢」の入札を巡る駆け引きを小説の基にしている。それにハーレクインロマンス並みの恋愛が絡んでいて、楽しませる。作者の処女作らしいが、なかなかの才能の持ち主である。35歳の若さでメトロポリタン美術館の館長になり、11年間の在職中にベラスケスのファンデパレーサを取得した、とあるから、入札で他の美術館を出し抜いて、成功したのであろう。
 そんな経験を小説にまとめるなど、心憎い才能の持ち主である。  


Posted by 北のフクロウ at 20:46Comments(0)読書

2018年01月15日

限界点 ジェフリー・ディーヴァー著 文芸春秋

著者はリンカーン・ライムやキャサリン・ダアンスを主人公とするシリーズのミステリーを書いているが、この作品はノンシリーズ作品で、連邦機関所属の警護官。彼とその敵役である調べ屋という悪者から調査を専門に請け負うスペシャリストとのゲーム理論に基づく駆け引きが見もの。この調べ屋は警護官の上司を殺した敵であった。悪者の下請けに殺し屋がいることはよくあるパターンであるが、殺し屋のまえに調べ屋がいて、その調査結果に従って殺しを行う。しかし調べ屋は調査のためには殺しもいとわないという非情な面がある。
 警護官によって保護される依頼者の家族は誰を何のために保護されているかが分からない。警察官か、その妻か、その妻の妹か、はたまた警察官の娘か。そのような疑惑の中に、警護官と仇敵の調べ屋の虚々実々の駆け引きがある。
 対象が誰で、黒幕の悪者が誰で、動機は何かというところが、段々明らかになるが、その過程のスリルがたまらない。
 それにしても、警護官の部下の調査官の調査能力が素晴らしい。こんな部下を持った上司は仕事がやりやすくてたまらないであろう。
 大変上質のミステリーで、著者のリンカーンライムシリーズにあった、饒舌とも思える人間描写や性格描写が少し薄い分だけ、読みやすくなっている。  


Posted by 北のフクロウ at 10:53Comments(0)読書

2018年01月09日

大河の一滴、林住期 五木寛之著 

年末から正月はいろいろ人生を振り返る良い機会となる。
 そんな時期に五木寛之の随想はいろいろ考えるヒントを与えてくれる。
 人間の一生を春夏秋冬(青春、朱夏、白秋、玄冬)あるいは学生期(がくしょうき)、家住期(かじゅうき)、林住期(りんじゅうき)、遊行期の4つに分ける考え方がある。人生100年時代になったからこれを4つに分けると、林住期は51歳から75歳、遊行期は76歳から100歳に該当する。私は今年76歳になるから、めでたく林住期から遊行期に移行する。ここで書かれている林住期のあり方が実践できたかといえば、できていなかったので、これからの遊行期をあたかも林住期のごとく過ごすのでちょうど良いかもしれない。そうすると私の遊行期は100歳以降となる?
 人間は大河の一滴のようなものだ、という言葉はそのとおりだと思う。そう考えると気が楽になる。
 五木さんの本は、肩から力が抜ける感じがするところが良い。  


Posted by 北のフクロウ at 09:30Comments(0)読書

2018年01月09日

チューリングの遺産 ジェームズ・ロリンズ著 竹書房文庫

 チューリングはドイツのエニグマという暗号を解読し、第二次世界大戦の終結を早めることに貢献した人物として映画にもなった。一方で同性愛者として犯罪者となり、化学的手段を選んで投獄を免れ、その後自殺しているというドラマティックな人生を送った天才である。彼がエニグマ解読に使った計算機がコンピューターの起源であるという説がある。
 彼の残したノートからドローンにAIを搭載した武器の開発ができ、これを用いて世界を混乱させようとする情報産業の実業家がでてくる。
 ドローンは元々軍事用に開発された無人機が元であり、これにAIを搭載することにより、無人の軍隊を作ることが可能になる。将来の戦争はこのようなロボット代理戦争になる可能性がある。
 この野望を元アメリカレンジャー部隊の兵士であった主人公と軍用犬のコンビが阻止するところにこのミステリーの面白さがある。
 例によってジェームズ・ロリンズの描写は綿密で、迫真のストーリーとなっている。
 シグマフォース外伝のタッカー&ケインシリーズ2作目であり、3作目も書かれているようである。  


Posted by 北のフクロウ at 09:04Comments(0)読書

2018年01月09日

テロリストの回廊 トム・クランシー、ピーターテレップ著 新潮文庫

  タリバンと南米麻薬カルテルが手を結んで、メキシコーアメリカ間の麻薬ルートを通って、武器を持ち込み、アメリカの航空機に対してテロを試み、一部は成功する。こんなストーリーの近未来小説がトム・クランシー&ピーター・テレップの手で書かれた。
  2012年の作品で、この後クランシーが亡くなっているから、随分前のミステリーであるが、9.11を予言する作品を書いたクランシーであるから、相当の可能性を秘めた作品であろう。むしろこのような作品がテロリストにテロ計画のヒントを与えているのではないかという危惧をする。タリバンが麻薬の密輸を資金源としていることは明らかであり、資金源を断たなければタリバンの活動を止めることが出来ない、というのも事実であろう。  


Posted by 北のフクロウ at 08:45Comments(0)読書

2017年12月25日

人生の目的 五木寛之著 幻冬舎

 五木寛之の人生には目的はなく、目標があるだけだという言葉は、けだし至言であろう。したがって人生の目的は何かに思い悩むことはないことになる。同様に宗教によっては人間の生老病死の悩みはなくならないという言葉も正しいであろう。ただそれでも信じようとするのが人間であり、宗教がなくならない理由であろう。
 過酷な人生を経験しており、父親の厳格な教育者から自堕落な晩年を時代の流れに翻弄された生き方と理解するところはやさしい肉親に対する愛情を感じる。
 あまり五木さんの作品は読まないが、読んでみようという気になった。  


Posted by 北のフクロウ at 14:44Comments(0)読書

2017年12月25日

闇のオディッセー ジョルジュ・シムノン著 河出書房新社

 ジョルジュ・シムノンはメグレ警部シリーズの作者であるが、この闇のオディッセーはそれとは別に自殺願望の医師が最後にたどり着いた結論までの心理描写が見ものの小説。正直あまり面白くなかった。  


Posted by 北のフクロウ at 14:30Comments(0)読書

2017年12月25日

白き女神を救え クライブ・カッスラー、ポール・ケンプレコス 新潮

 NUMAファイルのオートカースチンとザバーラのコンビを主人公とするシリーズの第二作目。
 21世紀は水を巡る国家間の争いが起きるといわれているが、世界の淡水を私有化しようとする陰謀を阻止する闘いがテーマ。
 美しい女性科学者が、画期的な淡水化技術を開発しそれを無償で世界に提供しようとするが、淡水を私有化しようとする悪企業によって、殺されようとし、危うく航空機事故に巻き込まれ、心ならずもアマゾンの白き女神にさせられてしまう。それを救出しようとするストーリーと、鯨の不審死を解明しようとするストーリーが平行的に進んで、それが悪徳企業にたどり着くという、巧みな物語の構成になっている。二人の作者がいることがここで意味を持っている。恐らくクライブ・カッスラーとしてはアイデアを出し、ノベライズを共著者がおこなうという作り方をしているだろうが、アメリカらしい合理的な小説の書き方で、商業的な成功例であろう。  


Posted by 北のフクロウ at 14:25Comments(0)読書

2017年12月25日

ホワイトハウスの暗殺者 ジョン・ワイズマン著 新潮

 ホワイトハウスの中に大統領の暗殺者がいたら、シークレットサービスの責任者はどう対処すべきか?
 これは小説の中の話だが、今のアメリカをみると、下手をするとホワイトハウスの中に、ロシアのスパイがいたかもしれない、という小説よりも恐ろしいことになっていたかもしれない。
 それほど権力の座は魅力的だということだろう。
 シークレットサービスの長は家庭を愛しながら、別に愛人を抱えているという羨ましい?身分であり、そこが主人公の魅力になっている。
 それが公知であるというのが、アメリカらしいが、昨今のセクハラ騒ぎを見ると、さほど度量が広い社会でもないようだ。
 暗殺者が心理操作されている点が恐ろしい所で、このような犯罪が起こりうる恐れがあることを考えると、寒気がする。
  


Posted by 北のフクロウ at 14:06Comments(0)読書

2017年12月08日

モナ 聖なる感染 ダン・セールベリ著 小学館文庫

 題名からは何か病原菌の話かと思われるが、実はウイルスはウイルスでもコンピューターウイルスであり、モナはそのウイルスを作り出したハッカーの娘の名前である。その娘はテロリストのクラスター爆弾によって母親もろとも爆死している。その復讐をするためにハッカーがウイルスを発明し、文明社会に撒き散らそうとする。それに対抗するのがこれまたコンピューターの専門家で、BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェイス)という最先端のコンピューター技術を研究している。BCIではコンピューターと脳を結びつけて脳疾患の患者の機能をコンピューターで代替できないかという研究をしている。できあがった装置を妻に試した所、たまたまそのコンピューターがウイルスに感染していて、重篤な病気となる。それを助けるべく、ハッカーを探し出し、アンチウイルスプログラムを得ようとする。
 題名からは想像も出来ない最新のコンピューター技術をテーマにしたミステリーであった。
 このようにハッカーが題材となるミステリーが最近多くなってきている。
  


Posted by 北のフクロウ at 10:00Comments(0)読書

2017年12月08日

失われた遺骨 マチルデ・アセンシ著 マグノリアブック

 マチルデ・アセンシが「聖十字架の守り人」の次作として書いたミステリー。同じ主人公が今度はキリストの遺骨の入った骨壷を探し出す冒険談の体裁をとっているが、キリスト教の本質を巡る問題提起をしている。
 キリスト教を知ったときに最初に違和感を覚えるのは、キリストの生誕がマリアの処女懐胎によることとキリストが刑死したあとに復活するエピソードである。この小説ではキリストと彼の兄弟の遺骨が出てくる。キリストに兄弟がいたということはマリアの処女性に疑問を呈する。
 いかにもキリストの神性にためにパウロ以降のカソリック教徒が作り上げた物語であるという問題提起である。考えてみればキリストはユダヤ人であり、ユダヤ教の改革を目指したかもしれないが、彼自身はキリスト教信者ではなかった、というのは真実であろう。ローマ帝国が国家等位置の宗教としてパウロのキリスト教を利用したとの歴史的事実と初期のキリスト教の諸派のキリスト教の抗争には興味があって、多くのミステリー作家が小説のテーマに採り上げている。ここでもエビオン派という異端キリスト教徒が出てくるが、彼らはキリスト教の原義がユダヤ教と同じであり、それを融合した形としてキリスト一族の遺骨発見を永年にわたって探索していた。
 マルコポーロが重要な役割を果たしているなど荒唐無稽な所があるが、ミステリーとしては良くできた作品である。  


Posted by 北のフクロウ at 09:37Comments(0)読書

2017年12月08日

最後の晩餐の暗号 ハビエル・シエラ著 イースト・プレス

 「最後の晩餐」は言うまでも無くレオナルド・ダ・ビンチの傑作。ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラッツエ修道院の食堂にある壁画。この名画には謎があるということはダン・ブラウンの「ダビンチ・コード」でも明かされた。イースト・プレスのこの作品も謎解き要素が主題であるが、当時のローマ・カソリックと異端とされたカタリ派との確執が秘められている。レオナルド・ダ・ビンチの一連の宗教画は他の画家の描く宗教画と違って、約束事が守られていない。そこにダ・ビンチのカタリ派的な異端性を感じてこのミステリーになったのであろう。  


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2017年11月22日

ミレニアム4 ダビッド・カーレンクランツ著 早川書房

ミレニアムは3巻までスティーグ・ラーソンが書いていて、世界的なベストセラーになったが、作者の急死によりそこで終わるかに思われていた。しかし出版社のノーシュテッツ社がダビット・カーレンクランツに依頼し、4作目を市場に出したのがこの「蜘蛛の巣を払う女」である。
 背中にドラゴンのいれずみを入れた天才ハッカーリスベット・サランデルとミレニアム社のジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストは健在である。AIの世界的な研究者フランス・バルデルが何者かによって殺害されるがその謎を追って、二人が活躍するが、謎解きをするキーとなったのがフランスの自閉症の息子アウグストである。サヴァン症候群という数学的に優れた能力を持つ子供が登場する。
 AIが進むといずれの日にか人間の能力を超えたロボットが世界を支配する世界が生まれるかもしれない。
 日本で量子コンピューターが出来たという報道がなされたが、これによってAIがますます発展することであろう。  


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2017年11月22日

支配者 C.J.サムソム著 集英社文庫

 チューダー王朝弁護士シャードレイクの第3作目。ヘンリー8世がヨークに巡幸した際に随行を命じられ、時のカンタベリー大主教から密命を受ける。イングランド中世の田舎の情景が良く反映されている。この作品ではチューダー王朝ののそもそもの生い立ちに大いなる疑問を提している。すなわちヘンリー8世の祖父エドワード4世がその父ヨーク公リチャードの実子であるかどうか、ということである。もし実子でないとすると王位は別の流れになっていてもおかしくない。この時代の英国史はじつに複雑で、小説や映画にも良くなっている。
 そもそもヘンリー8世が興味深い人物である。生涯6人の王妃を迎えたが、多くを自らの手で処刑している。王位を自分の男子に譲ろうとし、男子をうむ可能性のある王妃を迎えることが理由で、ローマカソリック教と決別し、イギリス国教会を新たに建て、そのトップとなった。ヨーロッパに勢力を伸ばすためにフランスと対立し、スペインやドイツ諸国と同盟関係を結んだりした。国内ではスコットランドやヨークとも対立した。
 この小説では王妃キャサリン・ハワードが出てくるが、この王妃も臣下との密通を理由に処刑されている。
 すべてシャードレイクの行動に従って物語が展開しているので、主人公になったような感じでその時代に入り込んでいける。次のシリーズにも続くようなので、楽しみである。  


Posted by 北のフクロウ at 09:30Comments(0)読書

2017年11月22日

箱根の坂 司馬遼太郎著 講談社

 北条早雲を主人公とする歴史小説。北条早雲は戦国時代の走りになった人物とされるが、その詳細は明らかになっていない。
 もとは伊勢新九郎という鞍造りであったという。ただし並みの鞍造りではなく、時の将軍足利善政の儀典主任であった伊勢貞親の親類筋にあたる。伊勢家は小笠原流とならぶ伊勢流という幕府の行儀作法の家元に相当する。伊勢家は殿中の作法を整備したために幕府内に権勢を持っていた。その伊勢家に寄宿していたのが伊勢新九郎であったという。その新九郎が伊豆に拠点を持ち、そこから相模に勢力を伸ばして小田原に居城し北条家となる。このあたりは応仁の乱後の室町幕府の騒乱を反映しているようで、関東が戦国時代に突入していたことを示している。歴史的によくわからないだけに小説家としての司馬遼太郎の面目が躍如している。司馬は北条早雲を民意を掴んだ新しいタイプの施政者と捉えている。もっと研究されてもいい人物かと思う。  


Posted by 北のフクロウ at 08:56Comments(0)読書