さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2020年03月29日

気候の暴走 横山裕道著 花伝社

 著者は元毎日新聞の論説委員、現淑徳大学客員教授。本の副題は地球温暖化が招く過酷な未来といって、本題のショッキングなタイトルとは違い、まじめな内容である。東大理学部出身なので、環境問題を学術的に見ることができる。
 温暖化懐疑論に対して、客観的に評価する本がないかと思って書店で探して見つけた。
 ただこれを読んでもCO2が温暖化の原因であるという確信は得られなかった。気候問題は複雑で断定はできないが、CO2も温暖化の原因の一つであることは違いないだろう。おそろしいのは気温がある程度上がると正のフィードバックが働き、暴走するという。そうならないためにはどうすればよいのか。CO2を下げればよいという問題でもなかろう。
   


Posted by 北のフクロウ at 14:42Comments(0)読書

2020年03月29日

脱プラスチックへの挑戦  堅達京子著 山と渓谷社

 著者はNHKクローズアップ現代のプロデューサーをやっていた。副題を「持続可能な地球と世界ビジネスの動向」という。海洋プラスチックごみが問題になっているが、現状とNPO法人オーシャンクリーンアップの活動を取り上げる。世界の企業の脱プラスチックの動向が手際よくまとめられている。さすが第一線で環境問題を見つめてきたジャーナリストだけのことがある。日本の企業としては日本環境設計が取り上げられているが、同社はなんとアイエス法によるペットボトルのリサイクルを行っているという。これはペットリバーステクノロジーの工場を買い取ってリサイクルを行うという。ペットリバースは東洋製缶の子会社だった会社で、一度工場に行ったことがある。
 この本で言っていることはいかに日本のプラスチック廃棄物対策が遅れているかということだ。政治も経済界も環境に対する意識が低い。  


Posted by 北のフクロウ at 14:26Comments(0)環境/読書

2020年03月29日

同調圧力 望月、前川、M.ファクラー著 角川新書

 望月衣塑子は東京新聞記者、前川喜平は元文部科学省次官、マーティン・ファクラーは元ニューヨークタイムズ東京支局長、いずれも日本の社会の閉塞感がどこから来ているのかということを考えると、同調圧力にあるのではないかという。望月は官房長官の記者質問で納得いくまで質問して記者クラブ出入り禁止となった。前川は文科省の天下り事件で責任を取って次官をやめたが、加計問題で内閣官房の関与を公言した。マーテイン・ファクラーはニューヨークタイムスの東京支社長時代に外務省に対する批判的な記事を書いた際に上司を通じて批判を受けたことがある。彼らに共通していることは日本で自由に発言しようとしたとき、それを抑え込む圧力がかかるという。それを同調圧力という言葉で表現した。記者クラブの存在は自由な発言をできなくし、新聞ジャーナリズムをダメにするという。それを破った望月記者は異端児扱いされ、貴社クラブには出入り禁止となった。彼女を主人公にした「新聞記者」という映画はニホンアカデミー賞のグランプリを取った。
 前川は役人時代面従腹背で仕事をしたという。意に染まない仕事もこなし、ある程度のポストについてから、やりたいことをやったという。
 キャバクラに出入りしていたことを週刊誌にすっぱ抜かれたのは恐らく官邸の差し金で、内部調査室の情報がリークされたものだという。そういう陰湿なことを時の権力は平気でする。日本の社会の嫌なところだ。  


Posted by 北のフクロウ at 14:09Comments(0)読書

2020年03月21日

「地球温暖化」論に騙されるな 丸山茂徳著 講談社

「 地球温暖化の原因が二酸化炭素の増加だけでない。」ということを地質学者の立場から極めて学術的に述べている。題名はウラン仮名の出版会社の意向でショッキングにつけられているがまじめな地球温暖化懐疑論である。著者は東京工業大学の教授でマントルの移動についてプルートテクトニクス論を打ち立て日本地質学会論文賞受賞、紫綬褒章受章した一流の地質学者の著書であるから、説得力がある。
 彼は地球温暖化の原因は
    1 太陽の活動度
    2 地球磁場と宇宙線
    3 火山の噴火
    4 地球の軌道
    5 温暖化ガス
 中でも太陽の活動以外で気温変化に最も影響を与えるのは地球の磁場であるという。CO2は空気成分で質量比0.054%であり、毎年1ppm上昇しても、温度はほとんで変動せず、質量比0.33%の水蒸気の変動の方が影響が大きいと述べている。
この著作は2008年に発行されているが、この本の中であと10年たったら地球の気温は寒冷化に向かっていることが証明されると予言していたが、2019年時点ではまだ温暖化は進行中で、寒冷化の気配は感じられない。あと10年たったら寒冷化に進むのであろうか?そうなればIPCCの活動はいったい何だったのだろうか。笑って振り返る時代が来るのであろうか?
 おそらく、丸山先生は地球の長い歴史から見ると、10年、20年はほんの一瞬であり、誤差範囲であるといわれるであろう。誤差範囲のうちに人類が滅びないことを願う。
 先生の主張で一番共感したのは、二酸化炭素の削減を言う前に、人類の人口減少を考えよ、というところだが、言うは易く実行をどうするかは難しい。SDGsでも人口減少はゴールにしていない。
 いま新型コロナウイルスが猛威を振るっているが、人類の歴史から見ると、戦争、疾病、飢餓が人口減少の原因であった。新型コロナ肺炎が人口減少の疾病原因とならないことを危惧する。  


Posted by 北のフクロウ at 10:30Comments(0)環境/読書

2020年03月21日

エデンの祭壇 ジュームズ・ロリンズ著 扶桑社

遺伝子工学によって人間を兵器化し、世界征服をしようとする武装組織の野望を女性獣医と税関国境警備局のスーパーバイザーが協力して壊滅する。遺伝子操作で1組の染色体を加えることにより、動物を強力な兵器に変えられるが、その過程で先祖返りが起きる。自然界にあるフラクタルという概念を動物の脳に埋め込むという発想は作者の創造であろうがこのようなことができるのは恐ろしいことであり、人類創造のエデンの園の秘密に迫るものかもしれない。  


Posted by 北のフクロウ at 09:56Comments(0)読書

2020年03月21日

アンデスの黄金 ジェームズ・ロリンズ著 扶桑社文庫

 ジェームズ・ロリンズはシグマフォースシリーズが有名であるが、単発物でアドベンチャーミステリーを書いている。
 彼自身が獣医師であったことから自然科学とアドベンチャーと歴史が融合した小説を多く書いている。
 これは宇宙由来の未知物質を巡る考古学とインカの歴史が融合した魅力的な小説である。未知物質はドレクスラーが著書「創造する機械」で示したナノボットのようにマイクロコンピューターと建設機械を具備しているものと考えられる。インカ帝国はマチュピチュにあるような空中都市をアンデス山中に建設していたが、スペイン人によって滅ぼされた。文字を持たないためまだ謎に満ちた文明である。スペインには異端審判があって、18世紀まで存続していたが、この一派がペルーでも活躍したというフィクションが歴史の一端として盛り込まれている。クスコの歴史的建造物に太陽の神殿跡というのがあったが、この場所で彼らが活躍したと想像するだけで、ゾクゾクする。
 ジェームズ・ロリンズの小説はテンポがよく、ハラハラドキドキする場面展開が魅力である。  


Posted by 北のフクロウ at 09:39Comments(0)読書

2020年03月21日

アップ・ロード ネルソン・デミル著 講談社文庫

 ネルソン・デミルはヴェトナム戦争に出兵した体験を持つ。
 この小説は「将軍の娘」の主人公ポール・ブレナーが再登場し、陸軍犯罪捜査部からの依頼でヴェトナム戦争時の犯罪の捜査の当たる。
 ヴェトナムを南から北迄戦争の激戦地を巡る旅行記の趣がある。しかも戦争の思い出を生々しく伝える。犯人そのものはあっけないものだが、陸軍犯罪捜査部やCIAの思惑、現地のアメリカ人スーザンとの絡みなど小説的な面白さはあるが、やや冗長な感じがある。ネルソン・デミルの小説のひとつの特徴でもある。ブレナーとスーザンの会話のやり取りが面白い。彼の小説では女主人公が魅力的である。  


Posted by 北のフクロウ at 09:12Comments(0)読書

2020年03月06日

「地球温暖化」の不都合な真実 マーク・モラノ著 日本評論社

 地球温暖化についてアメリカの世論は温暖化脅威論と温暖化懐疑論の2者があり、マーク・モラノは懐疑論者の一翼を担っており、広報担当として共和党の懐疑論者の主張の基盤情報を提供している。これを信じる共和党員はトランプ大統領を筆頭として多くの信奉者を持っている。
 この著書はアメリカアマゾンのベストセラーになっているということが広告の売り文句だが、これを読むと内容が真実であるとすれば、懐疑論者に味方したくなるのは無理からない。もしこれが真実であれば、地球温暖化は二酸化炭素の濃度に関係なく、他の原因で温暖化が起きるのであり、二酸化炭素削減の努力をしても無駄であるということになる。温暖化の原因が二酸化炭素に寄らないから心配いらないということにはならない。むしろ何をやっても気候変動は防ぎようがないということになり、無力感にとらわれる。
 この本では温暖化の原因が二酸化炭素の上昇に寄らないことことは説得しても原因が何かには触れておらず、民主党の政策を批判し、トランプのパリ協定離脱を擁護することにとどまっている。
 ただIPCCの結論に疑問を感じることには、それなりに説得力があり、これからの環境保全活動のエネルギーを阻害することは間違いない。
 地球温暖化脅威論、懐疑論に一石を投じた問題の書であることは間違いない。  


Posted by 北のフクロウ at 21:33Comments(0)環境/読書

2020年03月06日

プラムアイランド ネルソン・デミル著 文春文庫

 ネルソン・デミルの小説は比較的単純な事件に対して過程の人間関係とか文明批判とかが面白く読ませる。
 プラムアイランドも殺人事件とのかかわりで動物疫病研究所が事件の核心にあると思わせながら、エボラの免疫を巡る事件と思わせながら海賊の財宝を巡る仲間争いが事件の原因であるという比較的単純な事件である。
 その中で、ニューヨーク市警のジョン・コーリー刑事が主人公で問題解決を図る。ジョン・コーリーは後日の事件の主人公であるが、ここではニューヨークで撃たれ九死に一生を得て、静養中の事件である。プラムアイランドはニューヨークの隣のロングアイランドのそばにある小島の名前であり、動物疫病研究所が置かれている。
 ジョン・コーリーはここでもCIAやFBIに対立して、独自の捜査活動を行う。一匹狼の捜査活動であり、事件解決能力のすばらしさはその後シリーズ化の主人公としての魅力に富んでいる。  


Posted by 北のフクロウ at 21:12Comments(0)読書