さぽろぐ

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2016年08月27日

第592回札幌交響楽団定期演奏会

 8月26日(金)キタラ
 今回は指揮にハンス・グラーフを迎え、フランスの作品を2曲演奏した。
 フランス現代音楽の作曲家デュ・ティーユの交響曲第2番「ル・ドゥーブル」
 ベルリオーズの幻想交響曲
1曲目は、題名が示すように、二つの大小のオーケストラが織り成す、3楽章のなんとも表現の仕様のない交響曲。
「ル・ドゥーブル」は分身という意味で、大小2つの編成のオーケストラが入り混じっている。
さほどおかしな和音ではないのだが、お尻がむずむずする違和感はやはり現代音楽のものだ。
それに比較して、幻想交響曲はなじみのある曲で、安心して聴ける。
トランペットをはじめとする管楽器が気持ちよさそうに演奏していた。
それに比較して弦は相対的に弱く聴こえた。
札響としても定演で12回も演奏しているというから手馴れたものだ。
  


Posted by 北のフクロウ at 17:38Comments(0)音楽

2016年08月25日

セス・コルトンシリーズ エリック・ローラン著

 エリク・ローランが創出したヒーローセス・コルトンを主人公にしたスパイ小説を2冊読んだ。
「消えた小麦」と「深海の大河」である。
 作者がフランス人ということで、英米と一味違うスパイ小説である。
 セス・コルトンはジェームズ・ボンドに匹敵する超人であるが、飛行機事故で最愛の妻を亡くし、一人娘をスイスに留学させ、執事の中国人とスコットランドの古城に暮らしている。
 科学技術の行く末を案じる「委員会」のメンバーとして、悪に立ち向かう。
 テンポが速いし、主人公が武術の達人であることから、どんな危機におちいっても安心していられる。
 それにテーマが現代科学技術が抱えている問題を正面から捉えているところがよい。
「消えた小麦」
 キルギス共和国とアルゼンチンが小麦が全く実を結ばないという危機に陥る。その影に遺伝子組み換えによって食糧危機を演出し、世界制覇をたくらむという陰謀を察知した委員会はセスに解決を依頼する。元技術が旧ソ連のGRUの開発になり、GRUの二つのグループが争うという手の込んだ仕組みになっている。
「深海の大河」
 こちらは海流の循環が地球の気温の維持に貢献していることに着目し、これが止まったときに起こるであろう氷河期の危機をテーマにしている。人工的に海流循環を止め、氷河期を到来することによって、人類の人口削減を図ろうという過激な環境保護主義者が悪人として描かれている。
 これはダン・ブラウンが「インフェルノ」でテーマとしていたことと同じで、増えすぎた人口が地球温暖化をはじめとする環境問題の元凶であるという発想に基づいている。「インフエルノ」では天才生物学者が遺伝子操作により人類を不妊にし、人口増加を抑制しようというものであった。「深海の大河」では氷河期を深海流を止めることにより創出し、人口の削減を図ろうというものであった。たしかにこの陰謀はセスの超人的な活躍によって防止できたが、人口増加の抑制は何も手が打たれたわけではない。
 このままでは人口増加に伴う食糧不足、水不足、地球温暖化による気候の変動、資源の枯渇等々により悲惨な未来が待ち受けている。
 しかし人類はその未来に目を背けて、目先の享楽にふけっている。
 オリンピックの華やかな舞台を楽しんでいる同じときにシリアやイラクではISがテロを繰り返している。
 これも人口削減のためにはやむ終えないことだと世界が是認する時代が来るかもしれない。
 戦争と飢餓と病気が人口削減の有効な手段であるということでは、今までの歴史の教訓が無駄になってしまう。
 今その英知を出すときが人類に求められている。
 そんなことを考えさせるスパイ小説であった。   


Posted by 北のフクロウ at 10:17Comments(0)読書

2016年08月25日

トルティカ神の聖宝を発見せよ クライブ・カッスラー著

 クライブカッスラーの新作。今回の共著者はラッセル・ブレイクで、主人公はトレジャーハンター夫妻のサムとレミ。
 金に困らない気ままなトレージャーハンター夫妻で、羨ましくなる。
 今回の宝物はメキシコの謎の都市国家トルティカの秘宝であるが、実はこの秘宝はバイキングの南下に絡んでいる。
 まだメキシコは行ったことがないが、マヤ文化のピラミッドは一度見たいと思っていた。
 ここにあるケツアコアトルの神殿が舞台である。そこで、バイキングの痕跡が発見されるとは、・・・・・・。
 興味津々である。
 宝探し+歴史の謎というカッスラーの一貫したテーマは、共著者ラッセル・ブレークの力を借りて益々健在である。
 ラッセル・ブレイクは自身冒険小説、謀略スリラー、ミステリー作家として40冊以上著作があるという。
 そちらのほうも読んでみたい。
   


Posted by 北のフクロウ at 09:40Comments(0)読書

2016年08月15日

修道女フィデルマ ピーター・トレメイン著 創元推理文庫

 ケルト学の権威である著者の修道女フィデルマを主人公とする短編推理小説。
 3冊のシリーズからなる。
 修道女フィデルマの叡智
 修道女フィデルマの洞察
 修道女フィデルマの探求
 元々は15作の短編集であったものを3冊に分けて翻訳したもの。
 主人公が魅力的である。
 7世紀のアイルランドの法廷弁護士にして裁判官の資格を有し、アイルランド5王国のひとつモアン王国の王位継承者の妹で若くて美貌の持ち主である。どの作品でも関係者の事情聴取と現場の観察が基本であり、優れた洞察力から事件を解決していく。探偵小説の典型であるが、時代と場所が特異であり、その歴史的意味だけでも読んでいて面白い。
 当時のアイルランドは対岸のブリテン島よりも進歩的であり、女性の法廷弁護士・裁判官がいるというだけで、かなり進んでいる。
 ローマカソリックよりもアイルランドキリスト教のほうが合理的であることも随所に見える。
 著者はイギリス人であるが、ケルト学を修めたジャーナリスト出身の作家であり、同じ主人公の長編も書いているというから、読んでみたい。  


Posted by 北のフクロウ at 17:06Comments(0)読書

2016年08月05日

PMFオーケストラ演奏会 プログラムB

 7月31日(日)キタラできく。
 PMFコンダクティング・アカデミーの受講者な発表会をかねているので、新人指揮者の指揮振りを目の当たりにすることが出来て、興味深かった。
 プログラムは
メンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」 指揮ミゲル・ドミンゲス
ベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番 指揮石崎真弥奈
ムソルグスキー「禿山の一夜」 指揮 アレキサンダー・プライヤー
そして、最後に指導教官のジョン・アクセルロッドの指揮で、
ブラームス作曲 交響曲第4番
新人指揮者とこれまた新人オーケストラPMFの競演ということで、大変興味深く聴いた。
PMFオーケストラはいかにも若さが売り物で、毎年楽しく聴かせてもらっている。
とくに禿山の一夜は原曲版のもつ荒々しさと、プライヤーの派手な指揮がうまくマッチして聴衆にアピールしていた。
対照的なのはドミンゲスのメンデルスゾーンで静けさと楽しさを静かな指揮ぶりでうまく表現していた。
石崎のベートーヴェンはいかにも優等生の指揮で一生懸命さが好感を持てた。これから女性指揮者は益々増えることと思われるが彼女にも大きく成長してほしい。
アクセルロッドのブラームスはベテラン指揮者らしく、メリハリの利いた安心して聴ける演奏であった。
いつも思うのだが、管楽器の演奏がすばらしく、キタラに良く響いていた。
PMFアメリカを加えたブラームスはソロパートのうまさは抜群で、演奏を引き立てていた。
ゲルギエフのGALAコンサートは残念ながら聴けないが、おそらくすばらしい演奏会になるだろう。  


Posted by 北のフクロウ at 06:48Comments(0)音楽

2016年08月05日

死者の短剣 惑わし L.M.ビジョルド著 創元推理文庫

 異世界冒険ロマンスSFファンタジーといえる作品だそうで、作者はファンタジーの世界では有名だそうだ。
 しかしこの種の作品が苦手だ。ファンタジーであるから、現実感がない。そこにロマンスを盛り込んでもますます浮ついたものになる。
 そもそも人類に地の民と湖の民などという二つの民族がいた世界を想像できるか。
 湖の民の基礎なる不思議な力はどうも説明がつかない。
 この小説を読み終えたのは主人公の一人湖の民の片手の警邏隊員のキャラクターが特異で、長寿な湖の民にあって55歳という高齢にもかかわらず20歳の土の民の娘とロマンスに陥るというファンタジックな物語にひかれたためである。
 続編があるが、おそらくそれを手に取ることはないであろう。  


Posted by 北のフクロウ at 06:21Comments(0)読書

2016年08月05日

エチュード 今野敏著 中央公論新社

今野敏の警察小説。
 今回の新味は心理調査官を事件解決の切り札としている点である。
 連続通り魔が渋谷、新宿で発生する。当初模倣犯の仕業と考えていたが、手口が当初協力者の計画的犯罪ではないかという心理調査官の解析から、犯人割り出しの手がかりが得られる。
 犯人像は音楽に精通し、心理学を学んだ者というプロファイリングから演奏家を目指したものの、非行Gの暴力でその道を断たれた音楽心理療法者となっていた犯人を割り出す。犯人の動機が演奏家の道を断たれた非行G風の男たちに対する恨みにあり、無実の者を犯人に仕立てるところに心理学を用いるという凝った手口を創造した。
 この種の小説は犯罪者に犯罪の巧妙な手段のヒントを与えかねない点にあり、群集の中の無差別殺人など周囲に多くの目撃者がいるだけに犯人のカモフラージュが成功する確率が高まるという側面をもつ。
 題名の「エチュード」はいかにも元音大生らしい一言、「練習曲」が犯人割り出しのヒントになっていたことから、付けられた。  


Posted by 北のフクロウ at 06:07Comments(0)読書