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読書・コミック  |札幌市北区

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2014年05月28日

上杉かぶき衆 火坂雅志著 実業の日本社

 戦国時代の上杉家の直江兼続は家老職でありながら天下に盛名を馳せた。この小説は直江兼続を中心に上杉家にゆかりのある人物を並べて、その時代の上杉家のありようを描いている。前田慶次郎、水原親憲、大国実頼、上杉景虎、甲斐御寮人、上泉泰綱、本多政重といった面々だ。共通して言えることは「かぶき者」と一口に言ってしまえるほど、人と異なった行動をする者、奇矯に思えるほど個性的な人物たちであり、その人間的な魅力が際立っている。その中で直江兼続の上杉家の義を重んじる人柄が浮かび上がってくる。戦国時代から江戸幕府に至って、上杉家は豊臣派として、徳川家にはむかうが、それでも米沢の地に生き残ったのは、直江兼続の力が大きかったのであろう。歴史に「もし」はないが、もし上杉謙真が武田信玄と争うことなく、上京していたならば、どんな天下人になっていたろうか。同じことは武田信玄にも言えることであって、この辺りが歴史の妙であろう。  


Posted by 北のフクロウ at 15:48Comments(0)読書

2014年05月28日

スギハラ・ダラー 手嶋龍一著 新潮社

手嶋さんは元NHKのワシントン特派員。9.11の時はNHKに出ずっぱりであった。1949年生まれというから、65歳くらいか。NHKを辞めたのちに、「ウルトラ・ダラー」という小説を書いて、多能ぶりを発揮された。外交・情報・テロの世界に詳しく、テレビでも直々姿を見かける。たしか岩見沢東高出身で、大学は早稲田でなかったか。北海道出身ということで、親しみを感じる。
 今回の小説は有名な杉原千畝氏に助けられたユダヤ人主人公が金融の世界で、その情報力を生かして活躍する。たしかに金融の世界では情報力が勝負を決めるので、ユダヤ人社会の力は侮れない。本筋以外でもお茶の世界や、染物の世界、金沢市の遊芸の世界に造詣が深く、感心させられる。果たして現実の世界は手嶋氏が予想したようになるのかどうか。彼の情報力が問われる。  


Posted by 北のフクロウ at 15:27Comments(0)読書

2014年05月17日

札響名曲シリーズ 1 戦争と平和を

 今年度初めての名曲シリーズ。
 佐藤俊太郎指揮、ピアノ 伊藤恵で
 ショスタコービッチ 祝典序曲
 ベートーヴェン   ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
 ベートーヴェン   戦争交響曲「ウエリントンの勝利」
 チャイコフスキー  序曲 1812年

 聴いて面白かったのは、ベートーヴェンの戦争交響曲。舞台袖左右に大太鼓等をおき、戦争の場面を音楽化していたことだ。イギリス軍とフランス軍の戦いで、ウエリントンがナポレオンに勝利した歴史上の出来事を表している。
 チャイコフスキーの「1812年」もロシアとフランス・ナポレオン軍との戦いで、ロシアが勝利する場面を劇的に描いている。音楽的にはチャイコフスキーの方が、有名であるし、聴いていて面白い。ここでも大砲を大太鼓で表現しているが、野外であれば、本当の大砲で空砲を撃ってほしいところだ。   


Posted by 北のフクロウ at 20:26Comments(0)音楽

2014年05月17日

クラッシャーズ ディナ・ヘインズ著 文春文庫

クラッシャーズというタイトルはなじみがないが、副題に墜落事故調査班とあるように、航空機の事故調査をする専門部署のようで、あとがきによると大統領直轄の事故調査部署で、航空機に限らず、鉄道、船舶、高速道路事故、パイプラインの事故と守備範囲は広いらしい。ここではテラリストの仕組んだ航空事故であるが、飛行機に搭載されているブラックボックスを通じて、航空機を操縦できるという恐ろしい事故である。その開発者がテロリストと手を組んで、事故を起こさせたというから、恐ろしい。事故調査班が原因を解明し、しかも犯人を追いつめて第二の事故を防止するところがハイライトであり、手に汗を握るスリリングな場面となる。実に才能のある作家であると思うが、これが世に出る第1作であるというから、アメリカには実に才能のある人間がいるものだ。もともと新聞記者であったというから、文才はあったのであろう。他にも作品があるというから、早く読んでみたいものだ。  


Posted by 北のフクロウ at 20:08Comments(0)読書

2014年05月04日

真田三代 火坂雅志著 NHK出版

安土桃山時代の戦国武将真田家を三代にわたって描いたもの。真田幸村が有名であるが、じつはその父である真田昌幸が偉いと思う。彼は武田、徳川、上杉、北条といった大大名の中にあって、真田家を存続することに知恵を絞った。戦いでは上田城にあって徳川家を2回破っている。その戦略は見事である。ただその場その場の生き残り策が表裏比興の者というそしりを受けた。その時代の物差しからすると、信頼できないということであろう。彼が唯一誤ったのは、関ヶ原の戦いであろう。そこでは石田三成の戦争経験のなさで、秀頼を担ぎ出す前に、家康の策略に乗って野戦に持ち込んだことである。
 この時代、戦さ戦さで計略を以って、裏切らせるかということが、戦いの前にいかに重要であるかということを、物語っている。今の政治では政党間、派閥間で駆け引きされているようであるが、戦国時代とあまり進歩していないようだ。そのような駆け引きを国際外交でも発揮したらよいと思うのだが、いかがなものか。  


Posted by 北のフクロウ at 22:08Comments(0)読書

2014年05月04日

もう、きみには頼まない  城山三郎著 毎日新聞社

「石坂泰三の世界」という副題がついていて、経団連会長として財界総理の名を奉られた石坂泰三の評伝である。今の時代このような骨太の財界人がいないので、石坂泰三のような人物が求められるのかもしれない。城山三郎の記述は淡々としていて、いわゆる立志伝の類の追従的伝記物ではなく、それが石橋泰三の人物をよくあらわしているのかもしれない。自由経済主義者である石橋泰三がいたならば、TPPをどう考えるであろうか。当然やるべきだというに違いない。  


Posted by 北のフクロウ at 08:32Comments(0)

2014年05月04日

デパートへ行こう 真保裕一著 講談社

 予定調和のパッピーエンド小説で、いかにも小説らしい小説。ジグゾーパズルを解くように、一つ一つの駒が最後にピタッと収まる。真保作品にしては珍しくコメディタッチの肩の凝らない作品になっている。このような気楽な小説が好まれるようになってきたのだろうか。それにしてもタイトルの「デパートへ行こう」というのは、いかがなものか。中を読むとなるほどそういうことか、と納得できるが、一見すると良く分からない。「深夜のデパートの出来事」とか、何か意味深長なタイトルがあってもよさそうである。  


Posted by 北のフクロウ at 08:17Comments(0)読書