さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2013年01月31日

ブラックアウト マルク・エルスブルグ著 角川文庫

 無政府主義者のサイバーテロがEUの電力会社を襲うことにより、ヨーロッパがブラックアウトになる。電気がなくなったとき文明はいかにもろいものであるかということを執拗に描く。これを防ぐのは元ハッカーのイタリア人。彼自身ジュノアのデモで当局に逮捕された経歴を持つ。スマート電力計の発達しているイタリアとスェーデンから停電が起こる。それに疑問を感じた主人公がいろいろの困難に遭遇しながらアメリカ人ジャーナリストやスェーデン人の恋人などの力を得て解決するが、その間原発が爆発するは、水力発電所は表示がおかしくなり停機するは、食糧がなくなり暴動化するは、囚人は脱走するは、で、社会が大混乱をきたす。明らかに福島原発事故を踏まえ、それをヨーロッパに敷衍して、物語を構成している。首相の怒る様など管首相の言葉をそのまま使ったかと思われるほどだ。現代文明はかくのごとくもろいものだということはよくわかるが、怖れるのはこの手法を狂信的なイスラムテロリストが真似て、キリスト教文明の壊滅を計画しないかということだ。小説家の想像力が、テロリストの行動力と結びつくことを恐れる。かくいうほどに現代文明は危うい基盤の上に立っているということか。小説はあまりに多くの場面を時系列的に細切れに描いているので、ついていくのが大変であるが、読み終わるといろいろ考えさせられる。
  


Posted by 北のフクロウ at 21:07Comments(0)読書

2013年01月20日

ライアンの代価 トム・クランシー&グリーニー 新潮文庫

 トム・クランシーのライアンものであるが、主人公はそのジュニアであり、ザキャンバスの工作員ジョンクラークである。ライアン自身は大統領候補として、現職のキールティと選挙戦を戦っている。トム・クランシーの先見性はアルカイダのツインタワーへの航空機激突の9.11で証明されたようなものであるが、この「ライアンの代価」ではパキスタンとインドの核戦争、あるいはロシアのダゲスタンのイスラム過激派の活動が背景にある。今アルジェリアでイスラム過激派のテロがニュースとなっているが、アフガンに端を発し、イスラム過激派が紛争の種子となっている。そのあたりにクランシーは小説の題材を求めているようだ。この小説ではザ・キャンバスの活躍で、パキスタンやダゲスタンシンパの実業家の陰謀を粉砕するが、その後編がありそうだ。ライアンはキールティを破り、大統領に返り咲くが、アメリカが向うべき方向を象徴しているようだ。少なくともクランシーのテロに対する姿勢がうかがわれる。スケールの大きい近未来小説である。  


Posted by 北のフクロウ at 10:09Comments(0)読書

2013年01月08日

お正月の映画

 お正月に映画を見るというのは子供のころからの楽しみであった。今年はお正月映画の目玉に乏しい。
1 ホビット
 ロード・オブ・ザ・リングの同一監督ピーター・ジャクソンが、同じような出演者を用い、同じような手法で新たな3部作を作るという。その1作目がホビットである。副題を「思いがけない冒険」といい、13人のドワーフと魔法使いのガンダルフにさそわれたホビットのビルボ・バギンズの冒険物語。粗筋は単純だが、3Dの画面は面白く、山の場面の美しさは眼をみはるものがある。これも一度見だしたら、最後まで見なければおさまらないであろう。
2 リンカーン弁護士
 蠍座というマイナーな作品ばかり上映する映画館がある。ここで家内と2本連続で映画を観た。1作目がこれ。チョイ悪の弁護士が、これも悪の犯人の弁護を頼まれたが、弁護士であるためにその悪を告発できない。そこで一計を講じて法廷の場面で悪をさばく。筋は話せないが、なかなかのものだ。
3 崖っぷちの男
 2作目がこれ。無実の男が脱獄して、自分の潔白を証明する。その手段は・・・・。ということでこれも筋を話せないが、B級映画なりに面白く見せている。

正月は映画を見るに限る。  


Posted by 北のフクロウ at 16:22映画

2013年01月08日

田中芳樹の本 バルト海の復讐、風よ、万里を翔けよ

正月に田中芳樹の本を2冊読んだ。
バルト海の復讐と風よ、万里を翔けよ
前者は15世紀のハンザ同盟の南ドイツの物語。後者は中国、隋の時代の物語。田中芳樹の小説は初めてだが、歴史ものが得意分野らしい。それも中国関係が多い。2冊比較すると中国が得意のように思われる。
後者の方が人物を良く描けているし、隋が滅亡した理由について煬帝のモノの判断基準が善悪ではなく、好悪であるというのは卓見である。大運河を開いた前半生の偉業は後代に称えられるが、その後の高句麗との戦いは悲惨なものであった。しかも勝機を逸する判断は隋の滅亡を速めた。主人公は伝説の美少女、男装の剣士であるが、この辺りはメロドラマ風でいただけない。
 前者はそれに比較して、ハンザ同盟のお勉強の成果を小説にしたというだけで、小説としては子供の読み物である。
 もう少し中国モノを読んでみようと思う。  


Posted by 北のフクロウ at 16:06Comments(0)読書