さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2020年05月15日

気象兵器の嵐を打ち払え クライブ・カッスラー、グラハム・ブラウン著 扶桑社ミステリー

 クライブ・カッスラーが2020年2月24日亡くなったという。88歳だった。長生きであった。
 翻訳されていない作品がまだ8冊ほどあるというから、当分彼の作品を読むことができる。
 ところで、この作品。NUMAノカート・オースチンとジョー・ザバーラのコンビで世界制覇を目論むイエメンの悪実業家に挑む。
 新兵器は有機物を捕食し、自己増殖するマイクロロボットで、悪実業家は海中で増殖させ、海面に並べて海水温度を低下させ、気象を変動させようとするもの。雨の降り方をコントロールし、多くの金を出した国に思い通りのうりょうをもたらそうという壮大な計画である。そのマイクロロボットを用いて言うことを聞かないエジプトにはアスワンハイダムを決壊させるということも企む。それに対抗するオースチンの兵器は旧日本軍に対抗する目的で開発された1940年代の「ペインメーカー」なる音波兵器。ここらあたりがカッスラーらしいところ。  


Posted by 北のフクロウ at 16:15Comments(0)読書

2020年05月12日

AIの魔女 ジェームズ・ロリンズ著 たけ書房

 シグマシリーズの最新作。
 今回は魔女狩りとAIがテーマである。
 AIの天才少女が開発した「イブ」を狙って、二つの弱な集団が暗躍する。異端審問官の流れをくむ「クルシブル」と宿敵ギルドの残党。逆に味方として「鍵」なる組織も登場する。クルシブルはAIを乗っ取り、邪悪な「イブ」を複製し、世界を壊滅することをもくろむ。ハタシテ、シグマはそれを防げるか?
 ポルトガルを旅行した時コインブラ大学を訪問した。ヨーロッパでも最古の歴史を誇る大学の一つで、町も中世の趣のあるいい感じの町であった。AIの天才少女はこのコインブラ大学でAI機器を開発していたという想定であるが、およそAIとは結び付かない町であった。
 キャットが瀕死の重傷を負い、昏睡状態から覚醒する医学的な治療法は医学もそこまでいったかという感じで、私の理解を超える。
 次作は来年の春ということなので、待たれる。  


Posted by 北のフクロウ at 11:10Comments(0)読書

2020年05月06日

アジアの隼 黒木亮著 幻冬舎文庫

 作者の経歴がユニークである。深川西高出身で5000mで北海道記録を持っていた陸上選手。早稲田に入学し中村監督の下で瀬古選手らと箱根駅伝を走り、優勝を経験している。卒業後三和銀行に入り、エジプト留学、英語の勉強をし、ロンドン駐在で国際金融の道に入る。そのご証券会社に転職し、さらに国際投資会社の要職を経たのち、小説家となる。ロンドン近郊に居を構え、世界中を取材しながら、経済小説を書いている。
 「アジアの隼」はベトナムの発電所の入札を巡る日本の銀行のハノイ駐在員の苦労を描いている。ベトナムのドイモイ政策に群がる国際金融の利権の奪い合いが熾烈であり、一時日本も入札競争に参加した時代があった。バブル崩壊電後の日本の銀行の姿がよく描かれている。
 日本長期債券銀行という架空の銀行が出てくるが、日債銀など倒産あるいは身売りした銀行の有様が想起される。
 ベトナムはハノイとホーチンミン市を旅行したが、バイクが走り回る市中の様子を思い出して懐かしかった。  


Posted by 北のフクロウ at 14:30Comments(0)読書

2020年05月06日

トップレフト 黒木亮著 祥伝社

 黒木亮の経済小説は金融事情が分からないと難しいところがあるが、国際金融を知る上に参考になる。
 トルコの日系自動車会社トルコトミタ自動車が工場建設で国際協調融資を受けようとするのに対して、富国銀行のロンドン支店国際金融担当の次長がシンジケートの幹事会社になって奮闘して協調を成功させる。世界の投資会社に富国銀行を退社して、対抗しようとする主人公の元同僚がいる。この駆け引きが面白い。国際金融に精通していない日本の銀行のうろたえぶりが著者の経験に裏打ちされてリアルに描かれている。ガラパゴス化した日本企業の世界金融におけるうろたえぶりが手に取るようにわかる。これでは世界に太刀打ちはできないだろうなと思える。政治の世界も同様のことがいえるであろう。  


Posted by 北のフクロウ at 14:11Comments(0)読書