さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

ログインヘルプ


2017年12月25日

人生の目的 五木寛之著 幻冬舎

 五木寛之の人生には目的はなく、目標があるだけだという言葉は、けだし至言であろう。したがって人生の目的は何かに思い悩むことはないことになる。同様に宗教によっては人間の生老病死の悩みはなくならないという言葉も正しいであろう。ただそれでも信じようとするのが人間であり、宗教がなくならない理由であろう。
 過酷な人生を経験しており、父親の厳格な教育者から自堕落な晩年を時代の流れに翻弄された生き方と理解するところはやさしい肉親に対する愛情を感じる。
 あまり五木さんの作品は読まないが、読んでみようという気になった。  


Posted by 北のフクロウ at 14:44Comments(0)読書

2017年12月25日

闇のオディッセー ジョルジュ・シムノン著 河出書房新社

 ジョルジュ・シムノンはメグレ警部シリーズの作者であるが、この闇のオディッセーはそれとは別に自殺願望の医師が最後にたどり着いた結論までの心理描写が見ものの小説。正直あまり面白くなかった。  


Posted by 北のフクロウ at 14:30Comments(0)読書

2017年12月25日

白き女神を救え クライブ・カッスラー、ポール・ケンプレコス 新潮

 NUMAファイルのオートカースチンとザバーラのコンビを主人公とするシリーズの第二作目。
 21世紀は水を巡る国家間の争いが起きるといわれているが、世界の淡水を私有化しようとする陰謀を阻止する闘いがテーマ。
 美しい女性科学者が、画期的な淡水化技術を開発しそれを無償で世界に提供しようとするが、淡水を私有化しようとする悪企業によって、殺されようとし、危うく航空機事故に巻き込まれ、心ならずもアマゾンの白き女神にさせられてしまう。それを救出しようとするストーリーと、鯨の不審死を解明しようとするストーリーが平行的に進んで、それが悪徳企業にたどり着くという、巧みな物語の構成になっている。二人の作者がいることがここで意味を持っている。恐らくクライブ・カッスラーとしてはアイデアを出し、ノベライズを共著者がおこなうという作り方をしているだろうが、アメリカらしい合理的な小説の書き方で、商業的な成功例であろう。  


Posted by 北のフクロウ at 14:25Comments(0)読書

2017年12月25日

ホワイトハウスの暗殺者 ジョン・ワイズマン著 新潮

 ホワイトハウスの中に大統領の暗殺者がいたら、シークレットサービスの責任者はどう対処すべきか?
 これは小説の中の話だが、今のアメリカをみると、下手をするとホワイトハウスの中に、ロシアのスパイがいたかもしれない、という小説よりも恐ろしいことになっていたかもしれない。
 それほど権力の座は魅力的だということだろう。
 シークレットサービスの長は家庭を愛しながら、別に愛人を抱えているという羨ましい?身分であり、そこが主人公の魅力になっている。
 それが公知であるというのが、アメリカらしいが、昨今のセクハラ騒ぎを見ると、さほど度量が広い社会でもないようだ。
 暗殺者が心理操作されている点が恐ろしい所で、このような犯罪が起こりうる恐れがあることを考えると、寒気がする。
  


Posted by 北のフクロウ at 14:06Comments(0)読書

2017年12月08日

モナ 聖なる感染 ダン・セールベリ著 小学館文庫

 題名からは何か病原菌の話かと思われるが、実はウイルスはウイルスでもコンピューターウイルスであり、モナはそのウイルスを作り出したハッカーの娘の名前である。その娘はテロリストのクラスター爆弾によって母親もろとも爆死している。その復讐をするためにハッカーがウイルスを発明し、文明社会に撒き散らそうとする。それに対抗するのがこれまたコンピューターの専門家で、BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェイス)という最先端のコンピューター技術を研究している。BCIではコンピューターと脳を結びつけて脳疾患の患者の機能をコンピューターで代替できないかという研究をしている。できあがった装置を妻に試した所、たまたまそのコンピューターがウイルスに感染していて、重篤な病気となる。それを助けるべく、ハッカーを探し出し、アンチウイルスプログラムを得ようとする。
 題名からは想像も出来ない最新のコンピューター技術をテーマにしたミステリーであった。
 このようにハッカーが題材となるミステリーが最近多くなってきている。
  


Posted by 北のフクロウ at 10:00Comments(0)読書

2017年12月08日

失われた遺骨 マチルデ・アセンシ著 マグノリアブック

 マチルデ・アセンシが「聖十字架の守り人」の次作として書いたミステリー。同じ主人公が今度はキリストの遺骨の入った骨壷を探し出す冒険談の体裁をとっているが、キリスト教の本質を巡る問題提起をしている。
 キリスト教を知ったときに最初に違和感を覚えるのは、キリストの生誕がマリアの処女懐胎によることとキリストが刑死したあとに復活するエピソードである。この小説ではキリストと彼の兄弟の遺骨が出てくる。キリストに兄弟がいたということはマリアの処女性に疑問を呈する。
 いかにもキリストの神性にためにパウロ以降のカソリック教徒が作り上げた物語であるという問題提起である。考えてみればキリストはユダヤ人であり、ユダヤ教の改革を目指したかもしれないが、彼自身はキリスト教信者ではなかった、というのは真実であろう。ローマ帝国が国家等位置の宗教としてパウロのキリスト教を利用したとの歴史的事実と初期のキリスト教の諸派のキリスト教の抗争には興味があって、多くのミステリー作家が小説のテーマに採り上げている。ここでもエビオン派という異端キリスト教徒が出てくるが、彼らはキリスト教の原義がユダヤ教と同じであり、それを融合した形としてキリスト一族の遺骨発見を永年にわたって探索していた。
 マルコポーロが重要な役割を果たしているなど荒唐無稽な所があるが、ミステリーとしては良くできた作品である。  


Posted by 北のフクロウ at 09:37Comments(0)読書

2017年12月08日

最後の晩餐の暗号 ハビエル・シエラ著 イースト・プレス

 「最後の晩餐」は言うまでも無くレオナルド・ダ・ビンチの傑作。ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラッツエ修道院の食堂にある壁画。この名画には謎があるということはダン・ブラウンの「ダビンチ・コード」でも明かされた。イースト・プレスのこの作品も謎解き要素が主題であるが、当時のローマ・カソリックと異端とされたカタリ派との確執が秘められている。レオナルド・ダ・ビンチの一連の宗教画は他の画家の描く宗教画と違って、約束事が守られていない。そこにダ・ビンチのカタリ派的な異端性を感じてこのミステリーになったのであろう。  


Posted by 北のフクロウ at 09:12Comments(0)読書