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2017年12月08日

失われた遺骨 マチルデ・アセンシ著 マグノリアブック

 マチルデ・アセンシが「聖十字架の守り人」の次作として書いたミステリー。同じ主人公が今度はキリストの遺骨の入った骨壷を探し出す冒険談の体裁をとっているが、キリスト教の本質を巡る問題提起をしている。
 キリスト教を知ったときに最初に違和感を覚えるのは、キリストの生誕がマリアの処女懐胎によることとキリストが刑死したあとに復活するエピソードである。この小説ではキリストと彼の兄弟の遺骨が出てくる。キリストに兄弟がいたということはマリアの処女性に疑問を呈する。
 いかにもキリストの神性にためにパウロ以降のカソリック教徒が作り上げた物語であるという問題提起である。考えてみればキリストはユダヤ人であり、ユダヤ教の改革を目指したかもしれないが、彼自身はキリスト教信者ではなかった、というのは真実であろう。ローマ帝国が国家等位置の宗教としてパウロのキリスト教を利用したとの歴史的事実と初期のキリスト教の諸派のキリスト教の抗争には興味があって、多くのミステリー作家が小説のテーマに採り上げている。ここでもエビオン派という異端キリスト教徒が出てくるが、彼らはキリスト教の原義がユダヤ教と同じであり、それを融合した形としてキリスト一族の遺骨発見を永年にわたって探索していた。
 マルコポーロが重要な役割を果たしているなど荒唐無稽な所があるが、ミステリーとしては良くできた作品である。


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Posted by 北のフクロウ at 09:37│Comments(0)読書
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