さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2023年10月30日

影のない40日間 オリヴィエ・トリュック著 創元推理文庫

 作者はストックホルム在住のフランス人だが、題材を北欧の北極圏に住むサーミ人の世界に求めている。オーロラトトナカイとサーミ人の世界ミステリーで、異色である。タイトルの陰のない40日間とは太陽が出ない冬の世界のことで北極圏を指す。
 そこで、サーミ人の大切にしている太鼓の盗難事件とトナカイ牧畜者の殺人事件をおうトナカイ警察の二人の警察官の活躍を描く。
 サーミの独特の世界観がなんとも良い。  


Posted by 北のフクロウ at 16:13Comments(0)読書

2023年10月30日

ステーション・イレブン エミリー・セントジョン・マンデル著 小学館文庫

 コロナ以前に書かれた小説だが、新型インフレンザの猛威のため人口の99%が死に絶えたパンデミックを描いている。
 どういうわけかシェークスピアの演劇とオーケストラの楽団が一緒になって、ミシガン湖のほとりを細々と巡業している。
 タイトルの「ステーション・イレブン」とは主人公が持っている漫画本で、その中心人物のイレブン博士が移り住んでいる宇宙空間の名前である。不思議な小説でパンデミックの前後に時間が行き来し、シェークスピア俳優の心臓発作が舞台上で起きた日から、新型インフルエンザの感染が起き、その舞台にいた子役がその後の巡業のシェークスピア劇団の団員として生存している。死んだ俳優には3人の元妻がいて、最初の妻が「ステーション・イレブン」の作者である、などと話が錯綜している。
 コロナでは世界人口の何%が亡くなったかわからないが、99%が死に絶えた世界は想像もつかない。文明は当然滅びている。その中で人間は生存できるのであろうか?この小説では生々しい人類滅亡は描かれていないが、おそらくこんなきれいごとでは終わらないように思う。  


Posted by 北のフクロウ at 16:04Comments(0)読書

2023年10月19日

極東動乱 ディビッド・ブランズ著 早川書房

 高度のハッカー作戦でアメリカと中国が互いに戦争状態に陥るという近未来戦争。
 仕掛けたのは妻を殺されたテロリストで、北朝鮮の後ろ盾で優秀なハッカー集団を作り、米中のシステムに入り込む。世界の破滅が秒読みになろうかというところで、アメリカの士官候補生のチームがハッカー作戦を見破り、防御する。
 このような情報戦は現在進行中で、各国がその技を競い合っている。日本も遅まきながら自衛隊の中にハッカー部隊を作るようであるが、はたして対抗勢力に勝てるか。最近のハッカー事件を見ると極めて危うい。  


Posted by 北のフクロウ at 09:05Comments(0)読書

2023年10月19日

ザ・レッド・ライン 第3次欧州大戦 ウォルト・グラッグ著 竹書房文庫

 近未来小説。
 ドイツにネオナチ政権ができようとして、それを機会にロシアがドイツに攻め込んで欧州をその支配下にしようと電撃攻撃を仕掛ける。それを阻止しようとするNATOの米軍は少ない勢力で防衛する。圧倒的な勢力のロシア軍に対して精鋭の武器で対抗する米軍の構造は今ウクライナで展開されているロシアの侵略戦争をほうふつとさせる。ロシア軍は化学兵器や戦略核爆弾を使用し、米軍も対抗して戦略核兵器を用いる。究極は大国間の核戦争であるが、ここでは米軍の抵抗が功を奏し、ロシアで内乱が起き、独裁者が粛清され大事に至らなく終わる。
 米ロの対決が見もので、ロシアの電撃作戦と周到な情報戦はあわやロシアの野望が成就するかと思われた。
 アメリカが世界の警察の立場を捨てた今、起こりうる世界戦争のシナリオである。  


Posted by 北のフクロウ at 08:56Comments(0)読書

2023年10月19日

ガラスの鍵 ダシール・ハメット著 光文社文庫

 ダシール・ハメットと5冊の長編のうちの1冊。
 ネッド・ボーメントという賭博師が主人公であるところが異色。上院議員選挙に絡んで、上院議員候補の息子が殺され、その候補の娘と結婚しようとする賭博師の友人の政治フィクサーが犯人とされ、政敵の良い対象となる。実は真犯人は別にいて・・・・・。というあらすじ。賭博師は正義感によって犯人を究明するでもなく、金によって動くでもなく、そのあたりがハードボイルドである。  


Posted by 北のフクロウ at 08:43Comments(0)読書

2023年10月19日

ディン家の呪い ダッシール・ハメット著 早川書房

 ダシール・ハメットの5作の長編のうちの1冊。
 コンチネンタル探偵社の調査員が主人公。
 ゲイブルエル・レゲットという女性の周囲でいくつかの殺人事件が起きる。
 まとめてディン家の呪いといわれるがその犯人は意外な人物で、ディン家に関連する人物であった。
 さいごの調査員の推理が見事で真犯人をあぶり出すが、その過程における調査員の行動、考え方がハードボイルドである。
 ミステリーとしては5冊の中で1番ではないかと思う。

  


Posted by 北のフクロウ at 08:28Comments(0)読書

2023年10月19日

マルタの鷹 ダシール・ハメット著 ハヤカワ文庫

 ダシール・ハメットはハードボイルド作家の嚆矢といわれる作家で、生涯5冊の長編を書いただけである。
 そのなかでも有名なのが「マルタの鷹」である。サンフランシスコの探偵サム・スペードが主人公。何度も映画化された作品。
 1929年に発表されたというから、相当古い。
 物語は「マルタの鷹」という像を巡る争いで、怪しげな人物たちがその像の取得についてサム・スペードに助力を求める。
 「マルタの鷹」が本物かどうかは最後になって偽物とわかり、あらたな物語が生まれそうだが、そこまでは描かれていない。  


Posted by 北のフクロウ at 08:20Comments(0)

2023年10月05日

キリングファーム 島田明宏著 集英社文庫

 島田明宏の競馬界シリーズの1冊。
 支笏湖と羊蹄山の間にある開拓地の牧場に就職した青年がその牧場で起きた殺人事件に巻き込まれる。
 そこには開拓地で起きた移住者と官吏との壮絶な殺戮の歴史があった。主人公もその移住者の先祖に縁があることが明らかになる。
 出だしはミステリーらしいが、後になると牧場と、その牧場の周囲を買い取ろうとする大会社の確執が事件の背景にあることが明らかになり、その不自然さが作品の面白さを興ざめなものとしている。従業員がなまうぁ違えどもみな兄弟姉妹であるというのも不自然である。  


Posted by 北のフクロウ at 14:20Comments(0)読書

2023年10月05日

ダービーパラドックス 島田明宏著 集英社文庫 

 島田明宏という作家を知らなかった。
 この「ダービーパラドックス」など競馬界をテーマにして作品を書いているらしい。北海道生まれで、作品の概要が北海道にゆかりがあるようなので、図書館で手に取った。
 もう一つの作品の「キリングファーム」の解説をTVキャスターの草野仁さんが書いていて、その中で「ダービーパラドックス」をべた褒めに褒めていた。たしかにこちらの作品のほうが、ミステリーらしく面白い。
 小林という競馬雑誌の記者があるオーナーの持ち馬にけがや事故が多いことに気づき、オーナーに不信を抱く。その記者の周りで先輩記者が変死したり、自身も身の危険を感じるような事件が起きる。
 サラブレッドに双子がいないことをこの本で初めて知った。ここでは双子の競走馬がいて、2頭がダービーで競い合う。この辺りは小説として不自然なところで、主人公ならずも不自然さに気づくところだ。  


Posted by 北のフクロウ at 14:11Comments(0)読書