さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2019年07月19日

今ふたたびの海 ロバート・ゴダード著 講談社文庫

 18世紀のイギリスを舞台とする歴史小説。ミステリーではないので、ゴダードの今までの作品とは様相が異なる。
 しかも今までのドダードの小説とは異なり、歴史と現代とが交錯していない。それだけに分かりやすい。
 彼の小説の中に、こんな言葉があり、真実だと思われる。
「歴史はいわば人間の経験の地質学であり、過去のあまたな人生の積み重なった層の中に横たわる悲劇や喜劇を研究する学問である。
死ねば勝者も敗者も無い。かって生きていたが、二度と生きることのかなわぬ人々がいるだけだ。彼らが考えていたこと、彼らが信じていたこと、彼らが願ったことはあらかた消えてしまっている。そして、そこに残っているのは歴史である。」

 個々での主人公は舞台回しになっていて、スーパーヒーローではない。むしろ歴史の中で振り回される一庶民である。むしろここでは悪女と考えられるヒロインが最後に見せた決断が主人公を救い、歴史に抵抗する人間として印象に残る。悪女か、そうでないかは意見が分かれるところであろう。 

   


Posted by 北のフクロウ at 21:04Comments(0)読書

2019年07月14日

テッサリアの医師 アン・ズルーディ著 小学館文庫

 太った男といわれるなぞの男が解決するギリシャの事件。
 この男、アテネから来たという調査員で、どういう目的でギリシャの田舎町に来たかはなぞである。
 この小さな町で開かれる予定であった結婚式に花婿が現れず、さらにその花婿は何者かに薬品を顔にかけられ失明するという事件に発展する。花婿はフランスから来たという医者で、老女に親切で、評判が良かったという。誰がそんなひどいことをしたのか?
 その医者の正体はいったい誰なのか?なぞは深まる。
 もともといたその町の医者の言葉が、ユニークだ。彼はろくに薬も出さず、すこぶる町の評判が悪く、新たに来たフランス人医師にその地位をうばわれようとしていた。
 「人は治療を受けようが受けまいが死ぬものなのだ。・・・・・誰も永遠に生き続けることはできないし、そうしたいとも思わない。患者によっては、むしろ助けないほうがいい場合だってある。それに救う価値のある患者だからといって、救えるわけでもない。現代医学というのは、患者の症状を抑え、命が尽きるまでの時間をほんの少し引き延ばせるというだけのことだ。だったら昔からの治療法のほうがよほどましだといえる。つまり蜂蜜をなめ、安静にして、アスピリンを2錠のむ。それでも効果はほとんど変わらない。・・・・・・」
 けだし名言であろう。
  


Posted by 北のフクロウ at 08:56Comments(0)読書

2019年07月10日

眩惑されて ロバート・ゴダード著 講談社文庫

  典型的なゴダード流の作品。
  主人公が歴史研究家で、18世紀のイギリス王朝に関わる歴史的事実がバックにある。これは少々わずらわしい。主人公の研究テーマであるらしい。
  少女の誘拐事件で、その姉が交通事故で死亡する。その親は離婚し、それぞれ再婚する。主人公は誘拐された子供の子守と結婚するが、別居している間に殺される。その死因に疑問を持った主人公は犯人探しにイギリスに戻る。犯人は誰か?
 ゴダードの小説らしく、最後まではらはらどきどきさせられ、あわや悲劇かというところで、ハッピーエンドになって、やれやれである。  


Posted by 北のフクロウ at 19:43Comments(0)読書

2019年07月05日

さよならは言わないで ロバート・ゴダード著 扶桑社文庫

 ゴダードの1994年の作品。建築家の主人公が施主の奥さんと道ならぬ恋に落ちるが、土壇場で駆け落ちをキャンセルする。それから10数年して、その相手が夫殺しの嫌疑を受け、その無実を証明するために、数々無謀とも思える行動をとる。余り理性的と思えない行動をとるのが、ゴダードの小説の主人公の特徴だが、ここでもそれが出ている。
 その努力の甲斐も無く、死刑の判決がでて、執行の直前まであがくが、夫が毒殺され犯人の疑いで逮捕されてしまう。絶体絶命のピンチだが、そこは小説。真犯人が見つかり危機一髪を回避できた。普通なら、ここで、めでたしめでたしだが、ゴダードは一筋縄では終わらない。
 ここまでやる必要があるのか?  


Posted by 北のフクロウ at 08:41Comments(0)読書