さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2013年09月27日

コラプティオ 真山仁著 文芸春秋

コラプティオとはラテン語で「汚職・腐敗」の意とある。わざわざラテン語にした作者の意図はわからない。
真山仁の小説で、図書館の蔵書にしては新く、2011年の7月11日に発行されている本だ。あとがきを見ると、東日本大震災を経験してすでに別冊文芸春秋で3月14日に最終原稿を書いた後で、大幅に書き直してこの本を出版したとある。本来のコプラティオから出版後のコプラティオがどのように書き直されたかは興味のあるところである。
 ある政治家の講演を聞いた二人の若者は一人はその政治家が総理大臣になったのちに、その内閣官房専門調査官となる政治学者であり、一人は新聞記者となる。総理大臣の宮藤(くどう)は東日本大震災で行動的な言動が評価されて、総理大臣になった人物である。専門調査官の白石は「日本再生への提言ー求められる原子力産業の再編」という論文を院生時代に書き、宮藤に評価され、個人秘書となった。これがどのような内容であるかは詳らかではないが、沸騰水型原子力発電と加圧水型原子力発電のアメリカメーカーと日本のメーカーのミスマッチを言っているものと思われる。小説ではサクラという沸騰水型原発のメーカーがWCというアメリカの加圧水型原発メーカーを買収することを意味している。宮藤総理は日本の産業活性化のために原発を世界に売り込む戦略を立てるが、そのためにはウランの供給との紐つけが必要であり、アフリカのウエステリアという国で日本が発見したウラン鉱脈に目をつけ、その国の政治家にわいろを贈るのみならず、内乱の反政府軍にもわいろを贈る。そのあたりの国益と正義のあり方で政治家がどう対処するかが小説のポイントとなっている。正義にもとる首相に退陣を迫り、調査官と新聞記者が手を結び、退陣を示唆しながら小説は終わる。
 これは小説とは言いながら、今安倍内閣が進めている政策であり、アフリカとの連携が必要なことも事実である。フランスや中国と競って資源確保ができるかどうかは原発売り込みのキーポイントであろう。
そんなことをいろいろ考えさせる小説で、「ハゲタカファンド」に鋭く切り込んだ作者真山仁の作家魂は健在である。  


Posted by 北のフクロウ at 12:23Comments(0)読書

2013年09月21日

神の起源 J.Tブラナン ソフトバンク文庫

奇想天外、驚天動地のミステリーである。かって地球上に素晴らしい文明があって、世界が大洪水に襲われたときに宇宙に飛び出し、それがまた地球に戻ってくることを画策しているという。それと結託した一部のエリート階層が人類滅亡を計画し、自分たちは生き残ろうとする。その陰謀を防ごうとするNASAの科学者とその元夫のアメリカ先住民の血をひく元「影の狼」メンバー。非常に荒削りで、ご都合主義のストーリーだが、世界の宗教を分析し、神の起源は宇宙人であるという仮説はそれなりに説得力を持つ。ナスカの地球絵、ノアの洪水神話、ギリシャ神話の中の神と人間との交わり、これらのことを宇宙人と結びつけると説明がつくという。

  


Posted by 北のフクロウ at 09:00Comments(0)読書

2013年09月21日

札幌交響楽団第562回定期演奏会

9月20日(土)19時
キタラ
今回の定期演奏会のプログラムは大曲である。
ブリテン生誕100年記念と題して、戦争レクイエムを採り上げた。
尾高さんの思い入れの強い選曲ではないかと思う。
ソリストに
ソプラノ サビーナ・ツヴィラク
テナー  ティモシー・ロビンソン
バリトン シュテファン・ローゲス
を迎え、合唱はいつものメンバー札響合唱団、札幌アカデミー合唱団、札幌放送合唱団、HBC少年少女合唱団
戦争レクイエムという曲は重い曲である。ラテン語のレクイエムに英語の歌詞で独唱部分が書かれている。
全編戦争のむなしさをうたい上げている。特にLibera meの中でバリトン独唱は切々として、感動的であった。合唱もすばらしかった。  


Posted by 北のフクロウ at 08:47Comments(0)音楽

2013年09月04日

ペニシリンはよみがえる 山崎光男著 新潮社

 医療関係の小説を得意分野とする著者の1994年の作品。ペニシリンがエイズに効くかどうかは分からないが、もし特効薬となるとしたら国際的な争奪合戦が起きても不思議が無い。ましてペニシリン産生時のコンタミに薬効があるとすれば、菌株の争奪戦が起きるであろう。その菌株は馬の伝染性貧血症に効き、その病気はレトロウイルスが原因で伝染するという。レトロウイルスはRNAからDNAに逆に転写して増殖する逆転写酵素をもったウイルスということで、ソノレトロウイルスのなかでもレンチウイルスに属するという。エイズウイルスとよく似ているらしい。2013年の現在に至っても伝貧の治療法は確立していないし、ペニシリンがエイズに効いたという話もないから、この小説のバックグラウンドの科学的事実はフィクションの可能性が高い。

  


Posted by 北のフクロウ at 09:12Comments(0)読書

2013年09月04日

脱出連峰 トマス・W・ヤング著 早川書房

脱出シリーズの第3作目。舞台がアフガンに戻り、「黒新月」というテロ組織と主人公マイケル・パースン、ソフィア・ゴールドとの戦いを描く。改めてアメリカがアフガンに進出した意義を問う小説だ。アメリカとしては9.11の首謀者オサマ・ビン・ラディンを殺害した以上アフガンに拘泥する意味はなくなっており、アフガン政府で一定の秩序が保てるならば、米軍を撤退したいという方針は理解できる。あとは国内問題だと言ってしまえばそれまでである。いわばアメリカの面子が保たれればいいわけだ。恐らくまたタリバンの勢力が勢いを増して、主導権を握るにではないか。
今シリアに米軍が攻撃を加えようとしている。これも化学兵器の使用に対する制裁という事だが、人道上黙っていられないという事なのだろう。アメリカ人の気持ちとしてはイラク、アフガンの二の舞にはなりたくないというのが本音であろう。イスラエルに危害が及ばない限り手を出したくは無いのではないか。
 小説では「黒新月」は壊滅できたが、テロ組織は後を絶たず、モグラたたきの様相がある。イスラム原理主義者が無くならない限り、テロは終わらないかもしれない。

  


Posted by 北のフクロウ at 08:45Comments(0)読書