さぽろぐ

読書・コミック  |札幌市北区

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2013年10月24日

パイレーツ M・クライトン著 早川書房

M・クライトンは1942年生まれ、66歳でなくなったが、その遺作がコンピューターに残っていたという作品がこれだ。(正確に言うと「マイクロワールド」というのが最期の作品であるらしい)。
 17世紀のカリブ海はスペインの支配下にあって、イギリスなどが私掠船により大いに略奪をしていた時代である。主人公はその私掠船の船長。スペインの財宝を積んだガリオン船を襲いに出る冒険小説である。そこはクライトン、単なる冒険小説に終わらず、当時のジャマイカのポート・ロイヤルの描写など、歴史の蘊蓄が散りばめられている。スペインの戦艦との海上船など映画を見るような面白さである。スピルバーグが映画化しているとあるが、残念ながら見ていない。
 こんな面白い作品を書く作家を喪ったことは人類の損失であると思うのは私だけではないだろう。  


Posted by 北のフクロウ at 16:44Comments(0)読書

2013年10月24日

幻夜 東野圭吾著 集英社

 東野圭吾といえば、売れっ子のミステリー作家だが、この「幻夜」という作品は何を意図したものか良く分からない。犯罪小説であり、なり済ましの犯人が、なり済ましを隠し通すために犯罪を繰り返す。そのためには利用できるものをすべて利用する。その結果、真相に迫る警官も恋人も生かしてはおかない。読者はその行為に同情も共感もわかない。果たして主人公は何者か、なんでなり済ましのままでいるのか、良く分からないうちに、小説は終わる。
 最近の犯罪小説は、その殺人の巧妙さをてらうところがある。犯罪者はそれを模倣して犯罪を起こす。小説と現実の境界が曖昧になってきたところがある。簡単に人を殺し、しかもそれを隠すためにバラバラに切断して、隠蔽する。そのようなヒントを犯罪小説は安易に与えてはいないか?それを防止するためには、いかに巧妙に犯罪を犯しても最後は露見するものだという結末にしなければいけないのではないか?そんな道徳的なことを言っていては犯罪小説は成り立たないことは百も承知であるが、昨今の犯罪を見ると、いかにも安易に殺人が行われ、罪の意識が希薄である。それにはこの種のミステリー小説の影響があるのではないかと危惧するものである。  


Posted by 北のフクロウ at 09:46Comments(0)読書

2013年10月14日

札幌交響楽団第563回定期演奏会

エリシュカさんの指揮で、ドボルザークのチェロ協奏曲とブラームスの第3番の交響曲。
チェロは札響の首席チェロ奏者の石川祐支さん。石川さんのチェロはショスタコーヴィッチに次いで、2回目のソリスト出演を聴いたが、このドボルザークはエリシュカさんの指揮と相まって、名演であった。
ブラームスは渾身の演奏というべきもので、丁寧で、ケレン味のない、深みのある演奏であった。80歳を超える年齢であるから夜、昼の2回公演はシンドイことであろう。彼の指揮であと何回聴けるか。温かい人柄は聴衆にも伝わるものと見えて、圧倒的な拍手で迎えられた。土曜日のマチネということもあって、聴衆も多く、満足すべき演奏会であった。
キタラ
10月12日午後3時公演。  


Posted by 北のフクロウ at 08:52Comments(0)音楽

2013年10月06日

エリシュカの田園

札幌交響楽団名曲シリーズの一つとして「目に見える自然と心で聴く自然」~エリシュカ&札響の中欧名曲特集~という副題が付いている。指揮者エリシュカさんはオーケストラのメンバーや聴衆から愛されている指揮者であることが演奏会場で聴くとよくわかる。プログラムは定期でも聴いたことがあるベートーヴェンの6番「田園」とドボルザークの「スラブ舞曲」である。ベートーヴェンを中欧の作曲家というのはあまり聞かないフレーズであるが、エリシュカのレパートリーであることは間違いない。何となく昨年旅したチェコ、ハンガリー、オーストリアの雰囲気を感じることができた。素朴な田園風景が彷彿とされる。スラブ舞曲になると一層その感が深くなる。ボヘミアの秋の収穫の喜びが出ている。その中にそこはかとなく哀愁も感じられるのは、ドボルザークの曲というより、ボヘミア民謡的というべきか。エリシュカさんの指揮は12日の定期でも聴くことができるので楽しみだ。
 80歳を超えてお元気であるが、あと何回聴くことができるであろうか。そんな思いが聴衆の温かい拍手に表れているようだ。
キタラ 10月5日(土)
指揮 ラドミュラ・エリシュカ
ベートーヴェン 交響曲第6番 「田園」
ドボルザーク  スラブ舞曲集  


Posted by 北のフクロウ at 20:14Comments(0)音楽