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2013年12月28日

活断層 堺屋太一著 アメーバブックス

堺屋太一が通産省の役員の時代に自らの経験を小説にしていたのを、27年ぶりに公に出版した本だという。テーマは南の小島に石油基地を建設することになるが、それにまつわる石油基地の賛否を巡る騒動の本質を描いている。およそ公共の大型施設の建設には環境保護を盾に反対運動がつきものであるが、推進側からみると、どのように対処すべきか頭の痛い問題であろう。ここで面白いのは反対運動家のマスコミ対策マニュアルなるものが出されていることである。ここに役人時代の堺屋太一の面目が躍如している。
いわく、反対運動家のマスコミ対策マニュアルには、
1大規模性、新規性の宣伝をさせる。これは事業主の発表として行わしめるのがよい。
2マスコミに対して計画事業と同種の施設の故障や問題の発生を吹き込む。
3ニ三の有識者(当該問題の専門家である必要はない)に、計画事業の危険性を吹き込む。
マスコミにおける理論展開としては、
1確率にとらわれず巨大な危険の可能性を述べる。
2既発事故を規模・原因の共通性に拘わらず列挙する。
3既発事故を巨大事故に繋げて述べる。
4巨大事故発生時の最悪事態を空想図的に描写する(最重点)。
運動の現地主導者の選び方
1聖職者
2教師
3医師
4農業漁業関係の有力者
5理美容店主
自らは黒子に徹し、決して表に出ない。
理美容店主を入れるのは、運動はインテリだけでは成功しないということを示している。
ドラマ効果の作り方では、
「ドラマ効果は、ヒューマンウエア(対人技術)の最も初歩的かつ基本的な技術である。人間は統計的理性によってではなく、劇的な印象によって呼び起される感情で事を判断するからである。

 このことは原発の反対運動では成功せず、東日本大震災の悲惨な原発事故を起こしてしまったが、その後の反対運動をみても、「マスコミ対策マニュアル」以上の運動にはなっていないようである。
 この石油基地反対運動家もそこそこの反対運動が盛り上がった時点で姿を消してしまう。次の反対運動にエネルギーを燃やしていることであろう。


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Posted by 北のフクロウ at 09:07│Comments(0)読書
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