悟浄出立 万城目学著 新潮文庫

北のフクロウ

2024年04月10日 08:29

 直木賞作家万城目学の中国もの。
 中国の古典に触発された短編5作を収録している。彼は高校時代教科書に載っていた中島敦にヒントを得たという。
 西遊記に登場する沙悟浄の「悟浄出立」、三国志に出てくる趙雲を主人公とする「趙雲西航」、史記に出てくる虞美人の「虞妃寂静」、おなじく史記に出てくる荊軻の暗殺未遂を題材とする「法家孤憤」、そして式の作者である司馬遷を娘の目から書いた「父司馬遷」の5作である。
 この5作を読む限り直木賞を受賞するに値す作家であると評価できる。
 できることなら、中国史に台座愛を得た長編作を読んでみたいものだ。

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