アジアの隼 黒木亮著 幻冬舎文庫

北のフクロウ

2020年05月06日 14:30

 作者の経歴がユニークである。深川西高出身で5000mで北海道記録を持っていた陸上選手。早稲田に入学し中村監督の下で瀬古選手らと箱根駅伝を走り、優勝を経験している。卒業後三和銀行に入り、エジプト留学、英語の勉強をし、ロンドン駐在で国際金融の道に入る。そのご証券会社に転職し、さらに国際投資会社の要職を経たのち、小説家となる。ロンドン近郊に居を構え、世界中を取材しながら、経済小説を書いている。
 「アジアの隼」はベトナムの発電所の入札を巡る日本の銀行のハノイ駐在員の苦労を描いている。ベトナムのドイモイ政策に群がる国際金融の利権の奪い合いが熾烈であり、一時日本も入札競争に参加した時代があった。バブル崩壊電後の日本の銀行の姿がよく描かれている。
 日本長期債券銀行という架空の銀行が出てくるが、日債銀など倒産あるいは身売りした銀行の有様が想起される。
 ベトナムはハノイとホーチンミン市を旅行したが、バイクが走り回る市中の様子を思い出して懐かしかった。

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