浴室には誰もいない コリン・ワトソン著 創元推理文庫

北のフクロウ

2019年06月28日 08:46

 ユーモアミステリーというジャンルに属する小説だそうだ。ミステリーにはユーモアは似合わないと思うが、コリン・ワトソンという作家はその分野の作家らしい。
 浴室が殺人現場と思われる事件が発生するが、死者の姿が無い。どうやら死体は浴室で硫酸に溶かされたらしい。オドロオドロしい話だが、そこはユーモアミステリーで、凄惨さを感じさせない。そこが取柄の作品といえる。
 ユーモアミステリーに①主人公のエキセントリックな性格②不条理な場面設定の二つのパターンがあるというが、この作品は後者であろう。
 主人公の警部はまじめな警官でさほど個性が強くない。状況が凄惨な事件であるにもかかわらず、凄惨さを感じさせないほど、まわりの展開がユーモラスである。
 暇つぶしとしてはよいが、ミステリーとしては物足りない作品である。

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