ボーダーライン 真保裕一著 集英社

北のフクロウ

2012年03月17日 09:25

ロスの日本人探偵が主人公である。3つのエピソードが含まれていて、メインはどうしょうもない日本人犯罪者とその家族の物語である。ハードボイルド的なのだがどうしょうもない日本人のウエットな家族関係がそこにある。従ってハードボイルドにはなりえない。犯罪者の子供を殺そうとする父親の心情には心動かされるものがあるが、最後はあえて返り討ちになってしまう。覚悟の親心である。もう一つのエピソードは子供を殺してしまった犯罪者に対し、殺された子の親が犯罪者の子供を殺すことで復讐し、さらに自分の子供を殺された犯罪者が、その父親を殺してしまう、という殺人の連鎖反応である。それほど子供を殺された恨みがあるということだが、どうにかならなかったのか。主人公の探偵の観察眼なり、推理力には観るべきものがあるが、依頼主の父親の犯罪なり、子供に殺されるという悲劇を止められなかったのか。救いは自身の同居者の失踪事件が子供が生まれるというハッピーエンドに終わるところか。

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